至って健全な昼休み/お題:昼間のキス/制限時間:15分
「ちょ、ちょっと待って!まだ心の準備が……」
「大丈夫だよ。俺、ちゃんと調べてきたし」
昼休み、学校の廊下を歩いていると、どこからか男女の声が聞こえてきた。ここは理科室や美術室などの特別教室の並ぶ場所で、授業以外で生徒が来ることはほとんどない。現に、美術室に忘れ物をとりに来た私以外は廊下を歩いている人も見当たらない。遠くから聞こえる雑踏の中で、二人の男女の声だけがやけにはっきりと聞こえた。
「で、でも誰か人が来ちゃったら……!」
「こんな時間に誰も来ないよ。すぐ終わらせれば大丈夫だって」
なんだか怪しい雰囲気である。もしかしてこれって、聞いてはいけない会話では?どんどんと話し声が大きくなってくる。足音を殺し、胸をバクバクさせながら歩いた。
「あっ、いきなりそんなところ……!」
「お、落ち着いてって。あんまり大きい声出すとバレちゃうから……」
自分の中の疑いがいよいよ確信に変わる。昼休み、人気のない場所、男女のいやらしい声……これはいかがわしいことをしようとしているに違いない。いくら誰も来ないとはいえ、学校でそのような行為をするとはいかがなものか。どきどきしながら歩いていると、ついに二人のいるであろう場所がわかった。家庭科室だ。
私は勢いよく家庭科室の扉を開けた。
「うわっ!?」
「だ、誰!?」
予想通り、二人の男女がいた。しかし、その光景は想像していないものだった。
「包丁と……魚?」
「えっと……キスを捌こうと……思って……」
キス……魚のキス?
私は扉を閉めて立ち去った。
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