かれのきもち、ぬしのきもち/お題:冷静と情熱の間にあるのは嫉妬/制限時間:15分

「ねえ、今日隣にいたあの女、誰?友達?」

自宅にて。私が尋ねると、目の前の同居人には気まずそうに縮こまってこくりと頷いた。

「へえ、そうなんだ。ずいぶんと仲良さそうだったね」

彼は黙りこくったまま、そっと反応を伺うように私を見上げた。その仕草が可愛くて思わず心が浄化されそうになるが、今日という今日は本当に我慢ならないのだ。こんなことで惑わされてはいけない。

彼はかっこいい。街を歩けば老若男女に取り囲まれ、とてもじゃないが二人きりのデートは思うようにいかない。とびきりかっこいいのも考えものだなと思いつつ、今まで私はしょうがないと我慢していた。しかし、それも今日までだ。私は見てしまったのだ。彼が家の前で知らない女と触れ合っているのを。

「別にいいんだけどさ、ただ私が一方的に嫉妬しただけだし。でも最近なんか冷たいよね。一緒に遊んだり出かけたりすることも減ったし」

言っているうちになんだか悲しくなってきて、目が潤む。耐えられなくなって私は泣きだす。

「うう……っ、私、私、こんなに好きなのに……」

私の様子を見て後ろめたくなったのか、彼が近寄ってきた。私の膝の上にのり、宥めるように鳴き始める。

「にゃお〜ん、にゃお〜ん!」

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