冬の凍結地獄/お題:死にかけのつるつる/制限時間:15分
「うわー、すごい凍ってるじゃん」
朝、学校へ行こうと外に出ると家の前の道がかちんこちんに凍っていた。そっと爪先を乗せただけでも、つるっつるであることがわかる。
「転びそうだな……やだな……」
おそるおそる足を踏み出す。なるべく小股で、慎重に慎重に歩いていく。バス停までの道のりはそう遠くない。少しの間の辛抱だ。
「うわあ!?」
前方から誰かの叫び声が聞こえた。顔を上げると、先の方に地面に転がった男性の姿が見える。ああ、あの人もこのつるつる地獄の餌食になってしまったのだ。心の中でご愁傷様ですという。自分も転ばないように気をつけなければ。
「うわあ!?」
再び叫び声が聞こえる。さっきと同じ声だ。起き上がろうとした男性がまた足を滑らせたらしい。思わずくすりと笑ってしまう。自分はその男性に近づき、手を差し伸べた。
「大丈夫ですか?」
「ああ、すみません。地面が凍っているせいでどうにも……うわあ!?」
また滑った。尻もちをついた男性は痛そうに打ちつけた箇所をさする。
「いやあ、お恥ずかしい」
「この寒さじゃどこもかしこも凍ってますからね」
頭をかく男性を引っ張り上げる。引っ張り上げようとして、うっかり足が滑った。
「ぎゃあ!?」
「うわあ!?」
お尻に強い衝撃が走る。どうやら、二人して転んだらしい。もう笑うしかない。
「これはひどい」
そのあと、しばらく立ち上がれなかった。
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