おちゃめおじいちゃん/お題:白い孤島/制限時間:15分

「白い孤島を知っとるか?」

昔、祖父からそう尋ねられたことがあった。夏休みに母の実家に帰省した時のことだ。エアコンのない蒸し暑い居間で僕は暇をしていた。

「白い孤島?」

「ああ。なんでも、ここから北へ北へと進んだ先にあるそうじゃ」

「それがどうしたの?」

幼い僕が尋ねると、祖父はにやりと笑った。

「その島はのう、地図に載っていないんじゃ」

僕は首を傾げた。地図に載っていない島なんてあるはずがない。

「地図に載っていないのに、どうしてそんな島があるってわかるのさ?」

「そりゃあもちろん、何人も見たことがあるからじゃよ。地図には載らずとも、実在するんじゃ」

「おじいちゃんは見たことあるの?」

「実際に見たことはないがな……」

祖父はおもむろに写真を取り出した。そこにはたしかに、真っ白な大きな島が映っていた。

「白い孤島……」

「ほらの?実在するんじゃよ」

祖父はほっほっほ、とサンタクロースのように笑った。僕は写真をじっと見つめた。どこにあるのかもわからないまだ見ぬ土地に、胸が高鳴る。

「おじいちゃん、この島ってどこにあるの?」

「ふむ。お前も名前くらいは聞いたことがあるかもしれん」

「ほんと?教えてよ!どこにあるの?」

祖父は髭を撫で、いたずらっぽく笑った。

「北極じゃよ」




※北極は陸地でないので地図には載っていません。

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