悪魔と天使は結ばれない/お題:切ない悪魔/制限時間:15分
悪魔は天使に恋をした。純潔で清らかな心を持つ天使は、荒んだ心を持つ悪魔の目に新鮮に映った。ひと目見ただけなのに、その美しい姿が頭から離れない。耐えきれず、悪魔は天使に会いにいった。
「天使さん!」
悪魔が声をかけると、天使はゆっくりと振り返って小首を傾げた。
「どなたですか?」
「俺は……」
悪魔は言葉に詰まった。天使と悪魔は相容れぬ存在。互いに嫌悪して生きてきた。
「俺は……し、新入りです。主様のご命令でこちらに配属になりました」
「そうですか。これからよろしくお願いしますね」
柔らかに微笑んだ天使は光り輝いて見えた。眩しい。悪魔は胸が高鳴るのを感じた。
「あの、天使さん。お名前を聞いても?」
「名前?天使に名前はありませんよ」
「そう……ですか」
悪魔はがっかりした。目の前にいる他でもないこの天使だけを指す言葉が欲しかったのに。
「でも、不便じゃありません?名前がなかったら誰が誰だかわからなくなる」
「区別する必要がないのですよ。だってほら」
天使がそう言って目を閉じる。しばらくそうしていると、後ろからぞろぞろと白い何かが集まってくるのが見えた。
「え……?」
白いそれらはたくさんの天使たちだった。全く同じ見た目をした何十もの天使たちが悪魔の前に整列する。
「哀れですね」
真ん中の天使が悪魔に向かって静かに言った。
「悪魔が天使に恋をする、とは。ですがこの通り、天使はたくさんいるのです。この中からあなたが恋した天使を見分けられますか?」
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