お前は猫の言いなりになるのか/お題:元気な猫/制限時間:15分

「あ、猫」

突然、隣を歩いていた彼女が足を止めてじっと道端を見つめた。

「この前もここにいたんだよね、この子」

「へえ」

彼女の指差す先には、ボサボサの白と黒が入り混じった毛並みの猫が丸まっていた。彼女がおいでと手を差し伸べると、猫がぴょんと立ち上がって寄ってくる。

「可愛い〜」

よしよしと撫でられ、猫はにゃ〜んと鳴き声を上げる。大して興味のない俺はぼうっと彼女の方を眺めていた。

「なになに?お腹減ったの?」

「にゃ〜ん」

「でも何も持ってないんだよね……。今度猫缶でも持ってこようか」

「にゃ〜ん、にゃ〜ん!」

「え、野良猫に餌付けすんの?」

「別によくない?うちのマンションペット禁止だし猫飼えないんだからさ、これくらいやらせてよ」

「まあ好きにすればいいけど」

その時、猫と目があった。丸い大きな瞳に見つめられ、思わずたじろいでしまう。

『なあ』

「……は?」

『俺だよ、お前の女に抱かれてる俺、猫だよ。今、お前の脳内に直接話しかけている』

「……」

その言葉通り、頭の中に低い低音が響く。この猫こんなにハスキーな声してるのかよ。

『お前の女、たぶん浮気してるぞ。この前会った時は別の男連れてたからな』

『マジで?』

『マジだ』

目の前の猫は肯定するように、にゃおんと大きくあくびをした。

「……突然で悪いんだけどさ」

「え、なに?」

「別れよ」

「え?」

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