勧誘即興劇!/お題:楽しい交わり/制限時間:15分
「部活……」
高校に入って、私は部活に入るかどうか悩んでいた。中学の頃は帰宅部だった。入りたい部活がなかったし、汗を流す青春に興味がなかったからだ。しかし高校に入って、志を共にした仲間たちと何か一つの目標に向けてひた走るというのも悪くはない気がしてきた。
「と思ったけど、入りたい部活ないんだよな……」
私は新入生に配られた部活動一覧表を眺めてため息をつく。スポーツは苦手なので運動部はパス。問題の文化部だが、音楽や美術は興味がないし、科学部や写真部、新聞部なんかもいまいち心惹かれない。それでもまあ、活動内容も知らずに決めるのもはばかられる。ひとまず見学に行くか……。
「やあ、そこのあなた!」
「え……は、はい」
突然、背後から声をかけられる。振り向くと、異国風の服装をした背の高い女の人が立っていた。
「もしかして、どこの部活に入るのか迷っている新入生かな?それならばぜひ、我が演劇部をおすすめするよ!いやあ、実はこの後、第二体育館で公演があるんだ。よかったら見にきてくれないかな?後悔はさせない。お約束しよう」
女性はよく通る声で一気にまくしたてると、呆気に取られている私に向かってウインクをした。
「リリアンヌ!お前、こんなとこでまた道草を……って、ん?そいつは誰だ?」
するとまた女性の後ろから、今度は男性がひょっこりと顔を出す。
「演劇部に勧誘来ていたんだよ、ジョセフ。なにしろ、我が劇団は深刻な人手不足だからね」
「右も左もわからない素人がこられても困るんだが?誰が教育するんだよ」
「それは君だよ、ジョセフくん」
わけもわからず二人を見守っていると、次第にひとがあつまってくる。
(以下加筆分↓)
注目の的になって私がおどおどしていると、リリアンヌ役らしい女性が集まった観衆に向けて大きく手を広げた。
「いやはやどうも、お集まりいただきどうもありがとう。そんな諸君に素敵な情報だ。どうやらこの後、第二体育館で私が主役の劇があるらしい。さあ、気になった方は私についてきたまえ!」
リリアンヌが手を振り上げると、ぞろぞろとそれに続いて制服姿の生徒たちが歩きだす。呆然としていると、ぽんと肩に手をおかれた。ジョセフだ。
「で、あんたは来るのか?」
「え、えっと……」
答えに詰まっているとジョセフがにやっと笑った。
「ああ見えて昔はリリアンヌ……莉亜も引っ込み思案な奴だったんだぜ?俺の指導にかかれば大変身もお手の物ってわけだ。ま、気が向いたら来ればいい」
ジョセフは一瞬優しい先輩の顔になって、それからすぐに別の生徒を勧誘しに向かった。
「演劇……か」
面白そう、かも。
私はちょっとわくわくしながら第二体育館へと歩きだした。
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