ありきたりな日常の初雪/お題:子供の粉雪/制限時間:15分
「うわー、結構雪積もってる。雪かきしなきゃな……」
休日の朝、起きて窓の外を見ると、辺り一面が白く染まっていた。初雪である。
「おーい、朝だよ。起きて」
隣で眠る夫にそう声をかけると、夫は顔をしかめて布団にもぐりこんだ。雪が降るくらい寒いのだ。私だってまだ布団にくるまっていたい。
「ほら、起きなさい!」
「ん……」
勢いよく布団をまくりあげると、夫は身を縮こませて唸った。
「まだ寝る……」
「今日、出かけるんじゃなかったの?」
「んん……」
夫は観念した様子で体を起こす。二人で顔を洗って、朝食を食べに食卓についた。
「雪、すごいね。一晩でかなり積もった」
「だね。はあ……雪が降ると憂鬱だなあ」
ため息をつく私に対し、夫はどこか嬉しそうだ。夫は雪国の出身ではないので、こうして雪が降ると毎年わくわくしている。
「いいじゃん、雪。楽しくない?」
「ええ〜めんどうだよ。寒いし、雪かきしなくちゃいけないし」
「でも楽しいじゃん。子どもの頃、雪合戦するのが夢だったんだよね。あ、今から外でやろうよ!」
「嘘でしょ、何歳よ」
夫はへらへらと笑う。そうこうしているうちになんだか言いくるめられて、結局家の外に出てしまった。寒い。
「よし、雪合戦やろう!」
夫は意気揚々と雪をすくって丸めようとして、小首をかしげる。
「あれ、丸まらない」
「あー、粉雪だからね。雪遊びをするにはもうちょっと水分の多い雪じゃないと」
「そうなんだ。残念だなあ……」
夫はしゅんとする。本当に子どもみたいだ。
「あ、また雪降ってきた」
空から白い粉が舞い降りてくる。
「……綺麗だね」
「うん」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます