アルパカに恋した男/お題:セクシーなアルパカ/制限時間:15分

「アルパカのアンリちゃん、なんかすげー色気あるっすよね」

動物園が閉園してアルパカの飼育エリアに掃除に向かうと、後輩がそんなことを言い出した。

「可愛いとは思うけど……色気?」

「色気っすよ!ほら、首がすーって伸びた感じとか、こう見つめてくる感じとか」

「いや、わかんねーな……。動物に色気感じたことってねえし……」

「嘘!俺はよくあるっすけどね。この前なんか、俺が餌やりに行くと真っ先に近寄ってきてくれて……!はあ……檻から出して我が家に連れ帰りたい……」

後輩が熱っぽく語るのを俺は冷めた目で見下ろす。つい最近入ったばかりの新人だが、こいつは狂っていると思うことが多々ある。

「家に連れ帰って、何すんだよ」

「そりゃもちろん!一緒にご飯食べて、一緒にお風呂入って、一緒に寝るっす!」

「やべえよ、お前」

「何がっすか!おれはこんなにアンリちゃんに愛情を注いでるっていうのに!見ててくださいよ。アンリちゃんも俺にメロメロなんで」

アルパカが飼育されているエリアに来ると、後輩は一目散にアンリのもとへ駆けでした。

「アンリちゃーん!お待たせ!」

後輩の姿を見つけると、アンリがゆったりと近づいてきた。

「どうっすか!この通り、俺たちは相思相愛なんっすよ!」

「それって、お前がいつも餌やってるからじゃなくて?」

「違いますよ。俺たちは真実の愛で結ばれてるんっすよ。ね、アンリちゃん?」

そういうと、アンリは後輩に体をすりよせた。

「まあ仲がいいのは認めるけど……」


後日、アンリが妊娠したらしいと報告が入った。俺は一瞬、まさかと思って後輩を疑ったが、それは杞憂に終わった。それどころか、職員らが顔を綻ばせるなか、一人だけ鬱々とした表情で机に突っ伏する後輩を見つける。

「まあ、ドンマイ。報われない恋だったってことだ」

「うう……俺のアンリちゃんがあ……」

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