ランチタイムお嬢様/お題:弱いお嬢様/制限時間:15分

「知ってる?ほら、あの人。すっごいお金持ちのところのお嬢様らしいよ」

「へえ」

お昼時、混み合う大学の食堂で食事をしていると、隣に座っていた友人がそっと指差した。その先をたどるとたしかに、いかにも世間知らずのお嬢様といった様相の学生がいる。

「親がおっきい会社の社長なんだってさ」

「そう言われると、身につけてるもの全部きらきらしてる見えるなあ。たぶんブランド品でしょ、あの鞄とか」

「うわーいいなー!こちとら必死でバイトして生活費稼いでるってんのに」

雑談しながらこっそりとお嬢様を観察していると、何やら様子がおかしいことに気がつく。きょろきょろと辺りを見回し、さっきから同じ場所を行ったり来たりしている。

「もしかして、席なくて困ってる感じ?」

「あー、ぽいね。でもあそこ空いてない?陽キャ集団の隣」

「ええ……私だったらあそこ絶対行きたくないけど。怖いし」

「たしかに。私も無理だわ」

個人的に、陽キャは苦手意識がある。

「どうする?こっち呼んでみる?」

私が言うと、友人は立ち上がってお嬢様へと近づく。一言二言言葉を交わしたのち、友人がお嬢様を引き連れて戻ってきた。

「どうぞ、この席使ってください」

「あ、え、えっと、あ、ありがとう、ございます……!」

お嬢様が私の隣に座って、しどろもどろになりながらお礼を言う。こうして見ると、すごく気弱そうな印象だ。

「お昼時って混みますよね。席見つけるの大変だし」

「そ、そう、ですね……。ほんとに、助かりました。次からもっと早くきます……」

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