おっちょこちょい/お題:近い裏切り/制限時間:15分
「うーん……売り上げ厳しいですね……」
後輩がパソコンの画面を睨みながら言う。このところの不景気で、うちの会社はここ最近営業成績が悪い。
「どうします?先輩。このままじゃうち、潰れちゃいますよ!」
「だよな……。新たに広告を打ち出すにしても、なにしろお金がねえ……」
「うう……ここが潰れたら私、もう行く先ないですよ!」
後輩が涙目で訴える。正直、俺もこの有様には頭を悩ませているところだ。頑張っても頑張っても結果がついて回らない。倒産したらどうしようかと考えあぐねていると、部屋にうちの若社長が入ってくる。
「社長!見てくださいよこれ!このままじゃ会社がまずいですって!」
入ってくるや否や、後輩が叫ぶ。うちの唯一の取り柄といえば職場がアットホームなことだ。
「え、そんなにヤバいの?」
「ヤバいも何も、そろそろ倒産しますね」
俺が冷たい視線を送ると、社長は大して困っていなさそうにあちゃーと頭に手を当てた。
「ちょっと、真面目に考えてます?」
「考えてる考えてる!でもやっぱ、こういう戦略っていうの?俺には向いてないっぽいんだよね」
俺はため息をつく。社長がこんなだからだめなのだ。
「まあ、俺も考えますけど……それにしてもお金が足りないんですよ。社長、まさか横領とかしてませんよね?」
俺が冗談半分で言うと、社長はびくっと肩を震わせる。
「ままま、まさかそんなこと……」
「……は?」
しどろもどろになる社長に俺が低い声で圧をかけると、社長はゆでた葉野菜のようにしゅんとなった。
「は?横領とか、嘘ですよね?なんのために俺ら頑張ってきたんすか」
「いやいや!誤解だよ誤解!その、実は……」
そういうと社長はどこからともなく手帳のようなものを取り出す。通帳だった。
「その……実は俺、見間違えてたみたいで……桁を」
後輩と二人で社長が手に掲げた通帳を覗き込むと、そこには俺たちが把握しているより一つ大きい桁の金額が書かれていた。
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