見る目/お題:高貴な目/制限時間:15分
「これが百億の名画か……」
豪邸に巨大なキャンバスが運びこまれた。この城のような邸宅に住むのは莫大な富を持つとある資本家だ。業者によって運ばれたその絵画を前に、資本家は腕を組む。風景画だった。資本家はオークションでこの絵を競り落とした。その額、百億だ。しかし、資本家にとっては些細な出費にすぎない。
「ふむ……」
資本家は絵を隅から隅まで眺める。そして満足そうに頷いた。
「さすがはあの著名な画家の描いた絵だ。いやはや実に素晴らしい。では、この絵をを応接間に飾ってくれ」
資本家が指示を出し立ち去ろうとすると、執事が息を切らして部屋に入ってきた。
「た、大変です!」
「なんだ?そう慌てて」
「そ、その絵はどうやら偽物のようでして……!」
「何!?」
資本家は振り返って絵を凝視する。
「とてもよくできた贋作……らしいです」
「……」
資本家は言葉を失い、よろよろと絵に近寄る。舐めるように絵を見回し、それから全体を見た。
「……」
「ど、どうしましょうか……」
「……たとえ偽物でも、私がこの絵を好きなのには変わりない。私がこの絵に百億の価値を見出したのだから、たとえそれ偽物だろうと、本物だろうと、私には関係ないのだ」
資本家は静かに言い放った。そしてにこりと執事に笑いかける。
「お前もそうは思わんか?」
「……そうですね。ご主人様が言うのであれば間違いありません」
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