明け方の事情/お題:暑い独裁者/制限時間:15分

「はあ……」

真夜中、満点の星空の中で月がため息をついた。そのすぐそばで輝いていた星が尋ねる。

「どうしたんです?お月様」

「いやあねえ、私、最近どうにも痩せている気がするのよ。この前までは綺麗な満月だったのに」

「あーなるほど」

星はきらきらと瞬いて相槌を打った。

「それはね、お月様。新月に近づいていってるんですよ」

「新月に?でも、私、この前も新月だったわ」

「そうですよ。新月になって、満月になって、また新月になるんです」

「あら、私、消えてなくなっちゃうのかしら?」

星はもう何度も月にこの話をしていた。しかし、一度新月になってしまうと、月はまるで生まれたての赤ん坊のように何も覚えていないのだ。何度も何度も、新月になるたび、星は月に話を聞かせた。

「消えるわけじゃあないですよ。見えなくなるだけです。ほら、ちょうどお昼時はぼくたち見えないでしょう?それと同じです」

「つまり、太陽の陰謀ってわけね!」

突然、月は声を大きくして言った。

「あの人、いつも私の邪魔ばかりして!自分の方が明るいからって調子に乗っているのよ!」

「まあまあ、落ち着いてくださいよ、お月様。太陽さんだって大変なお仕事なんですから」

月は太陽を敵対視している節があった。太陽が出ていると月が見えなくなるからだ。

「でもあなただってそうでしょう?太陽がいるせいで私たち、消されるのよ」

「だから消されるわけじゃ……あ」

星が言おうとすると、空の反対側が白くなってきた。

「来るわ」

そしてだんだん、空の境界線が赤く染まる。顔を出したのは太陽だった。

「やあやあみんな、おはようサーン!太陽だけに、なんちゃって」

「お星さん、逃げましょう」

月が顔をしかめ、夜空から退場する。星もそのあとを追った。

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