女の戦い/お題:ねじれたババァ/制限時間:15分
「お宅のもみじ、こう、はらはら〜っと落ちて綺麗ですね」
朝、ゴミ捨てに行くと、ちょうど同じ時間に外に出てきた隣人の町田さんが声をかけてきた。町田さんは成人済みの三人息子を持つ母親で、私とほぼ同年代かと思われる。外面はいいが、時たまいやらしいことをいう。
「あはは、ありがとうございます〜」
「ねえ、こう、風に舞ってばーっとね」
「あはは〜」
私は笑って気づかないふりをする。鈍感なふりをしたらいつ町田さんが痺れを切らすから、少し試してみたくなった。
「道路にね、葉っぱが落ちてきて、まるで絨毯みたいと思って」
「ねえ、絨毯みたいですよね〜」
町田さんが眉をピクリと動かす。ああ、これはイライラしてきているぞ、と思って愉快な気分になる。
「そこに車が走ってきてね、葉っぱを巻き上げて走っていくのが、まあ綺麗で」
「紙ふぶきならぬ葉っぱふぶきですね〜」
「葉っぱふぶき……」
町田さんが困惑した顔をする。正直、自分でも葉っぱふぶきが何かよくわからない。
「まあ、それで、巻き上がった葉っぱがうちの玄関先にも飛んでくるんですわ。毎年それで、ああ、秋だなあっていう季節感をね、感じるんですよ」
「季節感、いいですよねえ〜大事ですよねえ〜」
町田さんのこめかみに青筋が浮かぶ。いよいよぷっつんと切れそうだな、と思って町田さんを眺めていると、案の定イライラしているのか、つま先を上げたり下げたりして地面をとんとんと叩きだした。
「それでもう、うちの玄関先にもみじの葉っぱがたまっちゃって。うちでこれだけお掃除が大変なら、お宅のお掃除はもっと大変でしょう?」
「そうですね〜大変ですね〜」
いよいよ町田さんの堪忍袋のおが切れた。
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