チャイロフスキー/お題:茶色い駄洒落/制限時間:15分

店内のBGMからクラシックが流れだす。アルバイトとしてカフェで働いている俺は、ちょうど客もいなくなって暇をしているところだった。普段クラシックなんて興味のない俺だったが、この曲には聞き覚えがある。軽快なピアノのリズムに合わせて体を揺らしていると、背後で店長がくすっと笑ったのがわかった。

「ずいぶんと楽しそうだね?」

「悪いっすか」

「いやいや、微笑ましくて何よりだ」

若店長はカウンターに肘をつき、にっこりと笑う。なんだか照れ臭くなって、俺は咳払いをしてテーブルを拭きにかかった。

「それにしても珍しいっすね、クラシックとか。店長、好きなんすか?」

「そうでもないよ。あ、でもショパンは好きかも」

ショパン、聞いたことはあるが、どんな曲を作ったのかは知らない。俺は音楽に全く興味はないが、店長は音楽好きらしく、こうして店内にBGMとして流しているのだ。

「じゃあ、問題です。今流れているのは『この曲はくるみ割り人形』ですが、この曲の作曲者は誰でしょう!」

店長がぴんと指を立てる。くるみ割り人形、聞いたことがある。しかし、作曲者……チャなんとかだった気がするが……。

「茶色……みたいな。チャイロフスキーでしたっけ?」

「茶色!?」

店長が吹き出す。

「惜しいなあ。正解はチャイコフスキー。茶色じゃないよ」

「ああ、そうでしたっけ?」

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