最強の剣士/お題:とてつもない伝説/制限時間:15分

「むかしむかし、大層強い剣士がおったそうでな」

王は勇者一行を前に語りだした。西の魔王を退治してくれと呼び出された勇者一行であったが、長らく王の無駄話に付き合わされている。勇者一向は心の中で、こいつ本当に西の魔王を退治する気があるのか、と思った。

「なんでも、剣を一振りするだけで、周囲を取り囲んだ魔物を瞬く間に倒してしまうそうですよ。まるで魔法を使ったようにね」

王の隣に座る女王が優雅に答えた。

「それが今回の件と何か関係あるのですか?」

「西の魔王のもとへ行くにはおぞましい森を抜けねばならんのだ。森の中には西の魔王が放った魔物がうようよとおる。あの剣士ですら、苦労した森だ。君たちはその森を抜けられるか?」

「当然です。王のご命令とあらば」

頭を下げた勇者たちを満足そうに見つめ、王は豪快に笑った。

「はっはっは!よい心意気じゃ!」

「懐かしいですね。昔はそうやって剣をふるっていたこともありました」

「ん?魔物を退治されたことがあるのですか?」

「退治したも何も、わしが今の嫁さんと結婚できたのはそのおかげじゃからな。西の魔物をばっさばっさと切り裂く姿、お前たちにも見せてやりたかった」

「じゃあまさか、さっき言っておられた最強の剣士というのは……!」

勇者が言うと、王はにやりと笑った。

「ああ、わしの嫁さんだ」

王と女王が見つめ合い、うふふと笑い合った。勇者一向はぽかんと口を開け、女王を見つめる。

「どうも、最強の剣士です」

女王が言った。

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