家出少年とホームレス/お題:不屈の失踪/制限時間:30分 ※未完
「おい、あんた」
公園のベンチにうずくまっていると、頭の上からしゃがれた声が降ってきた。
「こんな時間に何やってんだ?子どもはとっくに寝る時間だぞ」
顔を上げると、目の前には、ボロボロのダウンジャケットを羽織った、もうすぐお爺さんと呼べそうなくらいの年齢の知らない人が立っていた。
「……子どもじゃねえよ」
「ほう、いくつだ?」
17、と言おうとして、自分がまだ成人もしていない子どもだったことに気がつく。背伸びした思春期の子どもだと思われるのが嫌で、口をつぐんだ。
「……まあ、どっちにしろ、こんな夜中に出歩いてんのはよくねえ。はやく帰んな」
「夜中って、まだ八時だろ」
「時間なんか関係ねえよ。暗くなりゃそれはもう真夜中と同じだ。夜は冷えるぞ?家で布団にくるまってぬくぬくしてろ」
口うるさい爺さんにだんだんとイライラしてくる。返事をせず、顔を背けて膝を抱え込んだ。季節は秋、とっくに日が暮れた公園は思いの外寒い。パーカー一枚しか着てこなかった自分を少し恨んだ。
「帰らんのか?」
「……」
「飯はどうすんだ」
「……」
爺さんが書いてくるが、無視する。答える気にならない。そのうち立ち去るだろうと思って黙っていると、爺さんが俺の隣に腰を下ろした。
「は?勝手に座んなよ」
「こっちのセリフだ。このベンチは俺の寝床だぞ」
寝床、の意味がわからなくて首を傾げる。爺さんがベンチの下を指差した。
「使え」
ますます不思議に思い、言われた通り下を覗き込むと、何かが置いてあるのがわかった。しゃがんで手を伸ばすと、毛むくじゃらのふわふわしたものが手に触れた。毛布だった。
「貸してやる」
爺さんは素気なく言うと、大きなあくびをした。俺は爺さんをまじまじと見つめる。ぼさぼさの長い髪に無精髭。
「爺さん、ホームレスか?」
「ああ」
ベンチに座る。俺は手に持った毛布爺さんと一緒に被った。
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