第3話 仲良くなろう作戦
誰もいない静かな廊下にトタトタと響く音。静かな空間の中で人は全く足音を立てずに歩けるのだろうかと、またしょうもないことを考えながら歩く。
放課後、僕がここに来た理由は、おちこぼれ少女こと
「こんにちは平野さん!今日も頑張ってください‼」
「『はい!!』」
科学室で活動している科学部は昨日から部員である僕が増え二人。それまでは平野さんが一人で活動を行っていた。それじゃあなぜ、この部が廃部にならないのかというと幽霊部員が五六人いるからなのだとか。
ちなみに僕は電気科なので科学科の勉強や内容は全くわからないし、物理は少しできても化学は無知。まぁ、部活は学ぶところだから最初から知識がないと駄目っていうわけではないのだろうけど。
一番心配なのはうちの部長、
「あのぉ。いつまでフリップで話すんですかね」
「『話せるようになるまでです』」
「そうですよね……。今日は何を作ってるんですか?」
平野さんの手元にはビーカーに入った青い液体と透明な液体入りのフラスコと謎の白い粉。知識のない僕には危険ドラックか爆弾を作っているとしか思えない。それにあの青い液体なんかブクブクしてるし。
僕の質問に平野さんは目で『見ていてください』と
もしかしてこれ仲良くなってきているのではとミッションが順調なことに喜びを感じていると平野さんが指を指し『見て』と指示してくる。
そして僕は平野さんの指差す方向へ振り向くとそこには棚があって、その中に白いマグカップがいくつかあった。
「これを取れと?」
と僕が聞くと平野さんはコクコクと上下に首を振る。僕は彼女の言うとおり、マグカップを出して運んだ。
真っ白でシンプルなマグカップを持って平野さんはニコッと笑う。仕草が全部可愛い。でも……
ジュル〜 ジュルジュル〜〜〜
「ん!!???」
『でも、なんで笑ったんだろうか』と思っていたところでその答えはすぐに分かった。そして僕はそれに目を丸くして驚く。
「あ、あのぉ……。平野さん? まさかだとは思うけど、それ飲まないよね?」
平野さんは僕の声に反応することなく、ビーカーに入っていたあの怪しげな青い液体を透明な液体の入ったフラスコに移し。ガスバーナーに火をつけて少し温めるとマグカップに
「そ、それ美味しいの?」
と聞くと平野さんはフリップに『飲んだことないけどフルーツジュースの味』と書いた。
青いのにフルーツジュース? それにジュースって温めて飲むものだっけ……
「――のんで」
「えっ……」
両手で青ジュースの入ったマグカップを渡してくる平野さん。下から僕を少し見上げながらマグカップを渡してくる姿は天使のようで……むちゃ可愛い!!
可愛い女子が作った飲み物をいただけるのは人生初の体験。これから先僕みたいな陰キャ男子には訪れることがないかもしれないチャンス。
だけど中身が……
「うん!ありがとう。いただきます」
僕は覚悟を決めて恐る恐る口を付けた。匂いは桃のような甘い香り。
そして目をつぶり一気に流し込むと
「むちゃくちゃ美味い!!?! なにこれ! フルーツジュースだけどフルーツジュースじゃない!」
ホットで濃厚な味わいで甘く柔らかい舌触り。今までこんなに美味しいジュースを飲んだことがあるだろうか。君はジャイアンなんかじゃない。しずかちゃんさ。
国民的人気アニメが絡むとやはりハッピーエンドだな。
「ふぅ。よかった、美味しくないのかと思っちゃった」
平野さんは小さい声だが僕にも聞こえる声で安心していた。もしかしたらこんな可愛い女の子が僕の彼女になるかもしれない。そう思うと心がドキドキした。
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