第100話 いざゆかん、魅惑のビーチへ

 (株)総合勇者派遣サービス警備部の発足は、東雲さんの尽力により迅速に部署が立ち上がり、クロード社長がすでに関係各方面に送り込んでいたエルクラスト人達により人員は埋められた。


 発足した警備部は派遣勇者達の家族の警護から敵対者の捜索までを行う活動を始めている。


 これは公安調査庁にいた東雲さんの人脈も存分に発揮されており、日本における行動の制限はあまりされない密約が交わされたとか、交わされていないとか言われている。


 連続でオレを狙ったと思われる爆破事件は、エルクラストの派遣勇者達に衝撃を与えたようで、身内の安全が脅かされていると思った者も会社の迅速な動きで安堵して、今では安心して業務に励んでいる。


 オレも日常の業務に戻り、ヒイラギ領のオフィスで涼香さんと聖哉から街道工事の完了報告を受けていた。


「それにしても、警備部の発足は凄く早かったわね。元々、クロード社長が話を進めていたみたいだけど、東雲さんの行動力は凄いとしか言いようが無いわね」


「僕もお袋が襲われるかと思うと落ち着けないんで、警備部の発足はありがたいですね」


「わたくしも以前よりクロード社長と一緒に日本政府に派遣勇者の家族の保護を強化するように言っていたのですけどね。他国からのスパイには警備を強化していましたけど、エルクラスト側から仕掛けられるとはわたくしも思い至りませんでした」


「エルクラスト側に手引きしている者が存在しているということだな」


 オフィスにいた全員がオレの見た黒い外套の人物が、エルクラストと日本を行き来して派遣勇者の家族を狙うテロを起こしているものと思っている。


「それについては会社が責任もって警備してくれるから、俺達は業務に邁進することにしようか。それよりも街道がついにヒイラギ領まで到達したね。驚異的速さの街道敷設で街道ができあがってみんな驚いているよ。これでギブソンとヒイラギ領はかなり時間の短縮ができるから、今後はワズリンへの道を作っていくことになるね」


棘島亀ソーンアイランド・タートルの調査もボチボチと進んでいるみたいじゃし、街の破壊も最小限に抑えられたから港もいつもの賑わいを取り戻しているようじゃ」


 Sランク害獣同士の戦いでかたが付くとおもわれたが、その後にSSランクの害獣が登場したことで港湾施設に僅かな被害がでていたが、すでに港としての機能は回復して失った交易機会を取り戻そうと、多くの船が動き始めていた。


 ドワーフ地底王国の主要港であるワズリンを防衛したことで、王国関係者がオレに対して好印象を抱いてくれたようで、ワズリンの代表者であるシュラーも街道敷設のため、協力をしてくれている。


「ワズリンに集まったエルクラストの全土の品が街道を通じてギブソンまで流れれば、また新しい交易のルートが開拓できる可能性もあるわね。早い所ヒイラギとワズリンの街道も敷設していくべきね」


 涼香さんも自分が制作した工程表より早い段階での進捗に喜んだ様子だ。


「翔魔様……。そのワズリンの代表のシュラー様から孤児院の子供達向けにリゾート地区の宿泊施設の招待状が届いているのですが、いかがいたしましょうか?」


 エスカイアさんが胸の抱えていたファイルから一通の手紙を取り出して渡してきた。


 そういえば、修学旅行の計画もあったな。


「これはお礼と考えていいのかな? というか、こういった個人的なお礼は受け取っていいのかい?」


 手紙の中身はエルクラストの言語で書かれていたので、読めなかったがエスカイアさんの言う通り招待状なのだと思われる上質な紙と蜜蝋による印章で封印されていた。


「ヒイラギ領主の柊翔魔様宛に送られているので、貴族のお付き合いということで、咎めたてられることはないと思いますよ。近隣友好は大切な派遣勇者のお仕事ですよ」


「そうじゃな。小僧たちもその話で持ち切りになっているぞ。あそこのビーチはとても綺麗で素晴らしい場所だったからの。みせてやりたいのぅ」


「僕もイシュリーナと一緒に引率としてついていっていいですか?」


「そうだな。オレの代わりに色々と害獣討伐とか街道敷設頑張ったからいいよ」


「さすが柊主任! 話が分かる」


「翔魔が決めたらなら決定じゃな。小僧たちには準備をさせるので、荷馬車をチャーターしてくるのじゃ」


 トルーデさんがすぐに行動を起こして孤児院に向かった。


 こういったイベントに関する行動力は動きが早い。


「よし、今回のミッションはワズリンに修学旅行にしておこう」


 こうしてオレ達はシュラーの招待状によって、」ワズリンに修学旅行に向かうことにした。

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