第60話 なんだか、知らないうちに双頭竜に進化してた

「聖哉っ! まだ狙われてるぞ!」


 回避の際、体勢を崩した聖哉に、瀕死の銀水晶龍シルバークリスタルドラゴンが体当たりをしようと近寄ってきた。


 咄嗟に地面に転がっていた拳大の石を拾うと、そいつに向けて思いっきり放り投げる。


 音速を越えたスピードで飛んでいった石は銀水晶龍シルバークリスタルドラゴンの顎にヒットすると粉々に砕け散り、衝撃で銀水晶龍シルバークリスタルドラゴンが横倒しになった。


 その間に、聖哉が槍を構え直して再び銀水晶龍シルバークリスタルドラゴンに立ち向かった。


「翔魔さん、すみません助かりました。僕はまだやれますから」


 聖哉の戦闘意欲は旺盛で、一度見た水晶化ブレスの範囲を上手く読み切り、ギリギリの範囲で避けると、モーションの固まった銀水晶龍シルバークリスタルドラゴンの顔に向けて石突きで殴打を加えてダメージを加算していく。


 魔術がベースのトルーデさんは完全に回復役になり、エスカイアさんと涼香さんが後ろから援護射撃をしていくが、防御力の高い銀水晶龍シルバークリスタルドラゴンは援護攻撃をものともせずに、聖哉に目がけて体当たりをしていった。


「ひーん。私の攻撃通じないんですけど」


「Sランクの害獣には能力向上かけてもらっても、わたくし達では手が出ないみたいですね。くっ、なんとかお役に立たねば」


 涼香さんもエスカイアさんも、自分の攻撃が銀水晶龍シルバークリスタルドラゴンに通じないことを知りながら、攻撃の手を緩めることはしなかった。


 ダメージこそ与えていないものの、聖哉に攻撃が向きそうになると、横合いから攻撃されて気を逸らすことには成功した。


 そんな時、開幕早々にオレが湖にぶっ飛ばしてのしていた二体の銀水晶龍シルバークリスタルドラゴンのいる方向で、大きな爆発が起こった。


「なんだ!?」


 飛び散った湖の水がオレ達の方に降り注いでくる。


 オレは爆発が起きた方に視線を移した。すると、湖面にいたのは銀水晶龍シルバークリスタルドラゴンの頭が二本生えている新たな害獣の姿が飛び込んできた。


「なんだよ。アレは」


 双頭の竜になった銀水晶龍シルバークリスタルドラゴンがこちらを威嚇してくる。


 念のために【神の眼】を使って双頭の竜を鑑定することにした。


――――


 銀水晶龍シルバークリスタルドラゴン改二


 魔物LV75


 害獣系統:鉱物系


 HP:39450

 

 MP:28340


 攻撃:7340


 防御:6320


 素早さ:7450


 魔力:7280


 魔防:6340


 スキル:反射 強固 水晶化ブレス 吸収 衝撃刃


 弱点:打撃攻撃


 無効化 魔術 


――――


 やばい、結構強い部類の害獣になっているぞ。


『改二』というのは、二段階目ということか。


 しかもなんかスキルが増えているんですけど。


 双頭の銀水晶龍シルバークリスタルドラゴンはぶん殴ったオレを目の敵にしているようで、こちらに向けて衝撃によるの空気の刃を多数飛ばしてきた。


 下手に避けると背後で戦っている味方に当たると思い、防護障壁を展開していく。


 障壁に触れた空気の刃は粉々に吹き飛んでいったが、こちらの障壁にも蜘蛛の巣のようなひび割れが走る。


 中々の威力だ。こりゃあ、こっちを先に仕留めないとマズいことになりそうだ。


 聖哉達に瀕死の銀水晶龍シルバークリスタルドラゴンを任せ、オレは近くにいた三体目を取り込もうとしている、双頭の銀水晶龍シルバークリスタルドラゴンに向って転移する。


 オレは精霊魔術を使って自らの手を金属製に変容させた拳で、絡みつかれて取り込まそうな銀水晶龍シルバークリスタルドラゴンの脳天を打ち抜くと絶命させた。


 粉砕された頭部との結節部からは黒い靄が勢いよく噴出しており、頭部を失った胴体はバタバタと踊り狂うようにのたうっていた。


 取り込もうとしていた双頭の銀水晶龍シルバークリスタルドラゴンはオレを睨むと、両方の頭から衝撃刃と水晶化ブレスを同時に放つ。


迫る水晶化ブレスと衝撃刃を掻き消すために、風属性の魔術を発動させて相殺する。


「これ以上の被害が出る前に、本気でやらせてもらう」


 オレは金属化した腕をクルクルと回し、調子を確かめる。


 次の瞬間、転移を駆使して双頭の銀水晶龍シルバークリスタルドラゴンの胴体に近づき、渾身の右ストレートを叩き込んだ。


 拳を受けた銀水晶龍シルバークリスタルドラゴンの胴体が一気にひび割れが進行する。


「もういっちょ」


 逆の腕も金属化して正拳突きを叩き込んでいく。


 その姿は勇者というよりは拳闘士といった方が適性なのかもしれない。


「おらあぁ」


 双頭の銀水晶龍シルバークリスタルドラゴンの胴体に連続パンチをぶち込んでいくと、ひび割れは身体中に拡がっていき、反撃をしようとして近づいた頭部にアッパーがめり込むと砕け散って、日の光をキラキラと反射して破片が飛び散った。


 トドメの一撃として胴体に向かいフルパワーのパンチをぶち込むと、ひび割れが全身に拡がり、銀水晶龍シルバークリスタルドラゴンの身体が細かい破片と化して飛び散った。


 ボトボトと地面に落ちた水晶は一抱えほどの結晶体になっており、グエイグが探し求めていた銀水晶というレアな素材だと思われた。


 合体吸収をしてパワーアップした変異型銀水晶龍シルバークリスタルドラゴンを倒したオレは、未だに戦闘をしている聖哉とメンバー達の方へ急いで戻っていった。

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