第59話 武道経験ゼロだけど能力で押し切る
Sランク害獣がまとまって発見された魔境地区は、大きな山の中の麓にある湖を含んだ地域であった。
マップ上に映る赤い輝点は目の前の湖の中に集中していたが、ふと視線を湖に向けるとほとりに黒い外套をまとった人影が見えた。
すでにこの魔境地区に隣接する農村には避難指示を通達しており、住民は街に避難しているはずだ。
だが、ほとりには人影があった。
念のためにかけておいた
もう一度視線を戻すと、人影はこちらに気付くと景色に溶け込むように姿を消していた。
「なんだ……今の人影は」
「翔魔さん、どうかしました?」
聖哉は湖のほとりにいたと思われる人影を見ていなかったようで、不思議そうにオレの顔を見た。
「いや、湖のほとりに人影が見えたんだが、フッと消えてしまった」
「や、やめてくださいよ。そういう話は嫌いなんですって。人が消えるとかだと魔術で転移したんじゃないですか? 翔魔さんもできるでしょう」
「生体反応なかったけどね」
聖哉は怪談系の話が嫌いなようで、顔色を蒼ざめさせた。
多分、隠蔽魔術とかそのへんを使用していて、聖哉の言う通り転移で飛んだのかもしれないなぁ。
そんなことを思っていると、討伐目標の
一体かと思ったが、後から残り四体の
やっぱり
――――
魔物LV55
害獣系統:鉱物系
HP:13450
MP:11340
攻撃:2340
防御:4320
素早さ:2450
魔力:1280
魔防:4340
スキル:反射 強固 水晶化ブレス 吸収
弱点:打撃攻撃
無効化 魔術
――――
鑑定を終えると、
「翔魔様!? この
オレのディスプレイを覗き込んでいたエスカイアさんが、Sランク害獣である
「ん? どういうこと。害獣には個体差はないの?」
「いえ、LVによってステータスに差が出ることはあるんですが、固有スキルが違う個体なんて見たことも聞いたこともないんですよ」
「そうじゃのぅ。妾も害獣の固有スキルが違っておるものなど聞いたことが無いのじゃ」
トルーデさんも一生懸命に背伸びしてオレのディスプレイを覗き込む。
エルクラストの事情に通じた二人からの指摘によると、目の前の害獣は
ステータスを表示しているディスプレイを見ていくと、
「名前の後ろに『改』と書かれているが……。変異種なんだろうか?」
「えっ!? そんな表示なんて初めて見ますよっ! Sランク害獣に変異種が発生しただなんて大事ですよ」
「ちょっと、みんな。議論は後にして! こっちに来るわよ」
涼香さんの発した警告で、みんなの注意が
言われた通り、今は目の前の害獣を討伐することに集中しないと。
変異種かどうかの判断は機構の専門家に判断を委ねるしかないな。
「聖哉、五体の動きを止めるぞ。魔術は効かないようだから、物理でいく。みんなは援護よろしく」
オレは会社から支給された剣を引き抜くと、聖哉を引き連れ、湖から上がろうとする
その姿は蛇が威嚇する姿に似ているような気がした。
鑑定によって
なので、バフ系魔術で底上げした能力を使い、物理で圧倒するつもりだ。
一応、聖哉の実戦訓練を兼ねているので、オレは援護する方に回る。
「いきますっ!!」
聖哉が手にした槍をしごくと一体に狙いを付け、飛び出していった。
バフ系魔術で底上げされたステータスにより、LV以上の能力を発揮した聖哉は
その間にも別の四体が聖哉を襲おうとする気配を見せたので、眼前に転移移動して横っ面をグーパンチで殴り飛ばす。
ビシッと顔面にひび割れが走るとともに湖まで吹き飛ばされて盛大な水しぶきをあげた。
続けて、聖哉に襲いかかろうとした別の
固いなぁ。これは剣よりか拳の方がダメージが出そうだ。
剣をしまうと、先程と同じく握り拳を作り、オレに向って水晶化ブレスを吐こうとした
同時にスキルもコピーしてやった。
――――
>反射をコピーしますか? Y/N
>強固をコピーしますか? Y/N
>水晶化ブレスをコピーしますか? Y/N
>吸収をコピーしますか? Y/N
――――
ぶん殴ったと同時に表示されたスキルをコピーしていく。
その間に吹き飛ばされた
「翔魔さんっ! 僕だってやれますから!」
ステータスを底上げしているとはいえ、聖哉は槍での刺突ではダメージを与えられないと割り切り、戦術を変え、石突きによる打撃主体の攻撃に変え、
「聖哉、後ろだっ!」
背後から襲いかかろうとした別の
キラキラとした物に触れた草木が一瞬で水晶化していった。
瀕死の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます