第51話 お休みに入ると色々と立て込む
主任会議という名の役職者の懇親会は、ヤバい人達の集まりのはずなのに、穏やかに進行した。
その中で給仕してくれていたコンパニオンのお姉さん達も実は(株)総合勇者派遣サービスのグループ企業の社員さんだったことが判明した。
クロード社長や水谷主任から言わせると、他国のからの防諜対策で派遣勇者がハニートラップに引っ掛からないように綺麗な女性を積極的に独身派遣勇者に近づけているらしいとのこと。
まぁ、エルクラスト側とはまた違った意味で、日本側でも派遣勇者の存在は特別な扱いらしい。
そんな綺麗なお姉さんの給仕を受けながら、ワイワイと飲んでいたが、話のネタの中心はやはり俺の起こした二つの大事件で、ミチアス帝国での
そんな感じで、懇親会は業務時間いっぱいまで行われ、業務時間終了後は有志の人が残って二次会を行うことになったが、すでにしこたま飲まされて、ベロンベロンだったオレはエスカイアさんとともに二次会を断り、帰宅の途についた。
帰りのハイヤーの車中で寝てしまったオレは目覚めると、社員寮のベッドで猛烈な頭痛とともに目が覚めた。
「ううぅ、頭いてぇー。昨日は飲み過ぎたなぁ。クロード社長もウォッカ飲ませるとか、オレを殺す気だろうか」
隣ではなぜだか知らないが涼香さんがオレに抱きついて寝ていた。
うむ、まったく記憶がない。
「あ、おはようございます。翔魔様、朝ご飯はできておりますので、隣の方も起こしてあげてくださいね」
エスカイアさんがシジミ味噌汁と出し巻卵、納豆、ご飯という最強の朝めしコンビを作り終えていたようで、オレは隣で寝ている涼香さんを起こすことにした。
「涼香さん、起きて下さいよ。朝ですよ。っていうかなんでオレのベッドで寝てるんですか?」
「う、う~ん。もう少しだけ寝かせて……昨日は柊君が寝かせてくれなかったじゃない……」
まったく、記憶にございませんが……。何をした昨日のオレは。
涼香さんの発言に冷や汗をかきながらも、もう一度起こす。
「その件につきましては記憶がまったくございませんが、責任は取るつもりですので、お早目に起きてくださいよ」
その瞬間、涼香さんの眼がパッと見開く。
「本当!!結婚してくれ――」
その瞬間にどこからともなく飛んできたお玉が、涼香さんの頭にヒットしていた。
「たわけものっ! 涼香も少しは真面目に働いたかと思ったが、油断も隙もないのじゃ。翔魔が困っておるであろうが」
涼香さんがおでこを押さえてしょぼくれていた。
多分昨日は色々とあったのだろうが、記憶にはないが。
男としてはけじめは、キチンとつけるつもりなんだけどなぁ。
「すみませ~ん。気を付けます」
「さぁさぁ、皆さん。今日からお休みですけど、用事が詰まっているんで、早くご飯を食べて下さいね」
エスカイアさんが配膳を終えたようで、ご飯を食べるように促してきた。
なぜだか知らないが、朝夕の食事は皆が揃ってオレの部屋ですることが定着してしまった。
別に嫌ではないが、女性三人を侍らして飯を喰うというのも、色々と役職柄問題があるような気がしている。
けど、楽しいし、ご飯は誰かと一緒に食べた方が美味いので、難しいことは考えないようにしておこう。
オレは食卓代わりのテーブルの前に座ると、お茶碗をエスカイアさんに差し出した。
飯を喰い終わると、シャワーで二日酔いをスッキリとさせる。
昨日、約束していたスーツや家族へのプレゼントを買いにみんなで連れ立って銀座に向った。
まずは、オレの新たな相棒となるオーダーメイド仕立てのスーツを買いに、エスカイアさん行きつけの銀座の高級テーラーに来た。
銀座の一等地にある店はこぢんまりとしているが、店内にはスーツの生地が棚の上に置かれており、量販店のような吊るしの製品は一つも展示されていなかった。
「いらっしゃいませ。エスカイア様、本日は柊様のスーツをお仕立てしたいとのことでしたが」
「ええ、最高級の生地を使っていただいて結構です。素晴らしい一着に仕立ててもらえるかしら」
「かしこまりました。では、まず採寸をさせていただきます」
初老のテーラーがうやうやしく一礼をすると、奥の部屋に連れて行かれ首から垂らしていたメジャーで身体中の採寸を取られた。
初老のテーラーは、それらの数字を顧客情報の紙に書き込んでいく。
その後、仕上がりの希望や生地など色々と細かく聞かれたが、オレはチンプンカンプンだったので、オーダー品に慣れているエスカイアさんにすべてお任せしておいた。
値段の話が漏れ聞こえてきたが、同じのを三着作るようで、総額で一六〇万近い金額が請求された。
まだクレジットカードをオレが持っていないため、エスカイアさんが黒い色のクレジットカードで、一六〇万が難なく決裁された。
そういえば黒って無制限じゃなかったけ? というか、エスカイアさんの資産がどうなっているのかは、聞いてはいけないような雰囲気である。
それにしても、一張羅の相棒となるスーツとはいえ、一着五〇万以上するスーツを購入したのは、我ながらやり過ぎかもと思った。
でも、下手をすれば億円プレーヤーになりかねない年収に到達するので、それぐらいの物を身に着けないと、かえって会社のイメージを崩すのかもしれない。
50万以上のスーツを買ったとかお袋とかに言ったらブチ切れられそうなんで、黙っておこう。
あと初任給のお祝いとかも慎ましやかな物にしておいた方が、無難に思えてきた。
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