第12話 コピー能力と成長値がヤバイらしい


 光が収まると、中世ヨーロッパ風の街並みが続く広場に転移していた。行きかう人はいきなり現れたオレ達に驚く様子はみせなかった。


「あー、おかーさん。勇者さんだ。カッコイイね。僕も大きくなったら勇者になるんだ」


 広場で母親と買い物に来ていた子供がオレの制服姿を見て喜んでいた。


 この詰襟学生服が制服なのはどうかと思ったが、子供に人気があるのなら、着るべきなのか……。肩に結構派手な装飾が付いてるのだがな……。


「一応、この世界では派遣勇者は人々の尊敬を集める存在ですからね。その中でも日本人勇者は高能力者としてもっとも尊敬されていますので、先輩たちの築き上げた信頼を崩す行為は控えてくださいよ」


「はい、勇者の名を汚さないようにしっかりと業務に励まさせてもらいます」


「よろしい。では『マップ』で自分の位置とクエスト対象位置を確認しましょうか。メニューオープンからの『マップ』で確認できます。クエストを受注してない時は現在位置だけですね。確認してみて」


 エスカイアさんに言われる通り、マップを展開させる。


 現在位置は『エロクサルティム王国ファーメイ村』にいると表示されている。


 そして、クエスト対象の位置は南に三キロ下った『魔境管理区E10052』と表示されている。


 距離がキロメートル仕様なのは日本側の要望なのだろうか、それにしても助かる。


「南に三キロの『魔境管理区E10052』にクエスト対象がいると表示されましたよ」


「オッケー。じゃあ、後は歩くしかないわね。ちょうどいい運動でしょ?」


 こうして歩くこと二〇分、目的地である『魔境管理区E10052』に到着することができた。


 人家は周辺に無く鬱蒼と木々が茂る雑木林の中だが、視界はある程度開けていた。


 いよいよ。初の『害獣駆除』か……。き、緊張するぜ……。


「来た! 柊君、武器を構えなさい」


 先導するように歩いていたエスカイアさんが剣を抜いたので、オレも一緒に剣を抜く。支給された剣は刃渡り七〇センチ程度の剣で重さはそれなりにあったが、持てないほどではなかった。


 下草が揺れたかと思うと、緑色の塊が数体飛び出してきた。すると、視認した緑色の物体が光り、格納していたディスプレイが自動展開していく。


―――


 グリーンスライム


 魔物LV1


 害獣系統:スライム系


 HP:15

 

 MP:5


 攻撃:12


 防御:8


 素早さ:6


 魔力:6


 魔防:8


 スキル:打撃耐性


 弱点:火属性


 無効化:なし


―――


 視認したことで『神の眼』のスキルが発動し、魔物鑑定がされていた。その内の一匹がオレに飛びかかってきた。


 うわっと! 意外と俊敏じゃね?


 避けようとグリーンスライムに手を触れるとディスプレイに新たな表示される。


――――


 >打撃耐性をコピーしますか? Y/N


――――


 よく分からないがとりあえずYESを選択した。すると、MPが減ってスキル欄に『打撃耐性』が追加された。マジか……害獣のスキルもコピーできるの?


 自分が付与されたスキル能力に動揺していると、エスカイアさんから叱責が飛ぶ。


「柊君! 油断しない! 魔術はショートカット登録できるわ。『マジック』と呟きなさい。後は一覧から使える魔術を選択すればショートカット登録するか聞かれるわよ。さぁ、早くしなさい」


 高LVなエスカイアさんは、グリーンスライムの攻撃をほとんど無視している。言われたとおりに『マジック』と呟き、弱点の火属性である『ファイヤアロー』を選択した。


 ターゲットサイトが目の前に現れると、目標のグリーンスライムと重なった瞬間に赤く変化する。身体から何か抜け出す感覚とともに、炎の矢がグリーンスライムに向けて飛び出していった。そして、命中すると焼け焦げて動かなくなる。残りの二匹も炎の矢で退治していった。


 三匹倒したところで身体が白い光を発した。


――――


 >LVアップ


 柊 翔魔(ひいらぎ しょうま) 年齢22歳 人間 男性 国籍:日本


 社員ランク:F


 勇者素質:SSS


 LV1→2


 HP:20→2020


 MP:20→2020


 攻撃:20→220


 防御:20→220


 素早さ:20→220


 魔力:20→220


 魔防:20→220


 スキル:スキル創造 スキル模倣 神の眼 全系統魔術 全属性 全武器適性 全防具適性 打撃耐性

 

――――

 

 ディスプレイの表示を見たエスカイアさんが、地面に崩れ落ちて途方に暮れている様子だった。


「ちょっと待て……勇者素質『SSS』ってヤバすぎでしょ……わたくしはトンデモない方の教育担当になってしまったわ……HP、MPが二〇〇〇ずつ、ステータス値が二〇〇ずつ……ありえない成長値だわ……これが『SSS』の力……圧倒的じゃないの……」


 い、いやオレのせいじゃないんですけど……なんか、すんません。


 項垂れているエスカイアさんに触れると、例のスキルが発動していた。


 あれ? 大聖堂の時は発動しなかったのに……屋外だからかな。それともクエスト受注してるからか……。


――――


 >MP増加をコピーしますか? Y/N


 >交渉をコピーしますか? Y/N 


 >教育をコピーしますか? Y/N


 >情報収集をコピーしますか? Y/N 


 >索敵をコピーしますか? Y/N 


 >読解をコピーしますか? Y/N


――――


 エスカイアさんのスキルで被ってるやつ以外、コピーの可否が出てるな。MP足りる分だけコピーすっか。スキルはあって困るもんじゃなさそうだし。


 上から順にコビーしていくと、MPの数値がゴリゴリと減っていった。なんとかギリギリですべてのスキルをコピーすることに成功する。


 意外とMP喰ったけど、『MP増加』スキルでMP六〇〇〇台を突破してるな。これで、かなり上級の魔術も使えるようになったぞ。


「エスカイアさん、大丈夫?」


「ああ、はい。大丈夫よ。あはは、あと二レベルアップしたら、わたくしなんて抜かれてしまいますね……ふぅ……」


「いえ、オレは絶対的に経験が足りないので、エスカイアさんのご指導は今後も必要としてます。頼りにしてますからね」


「そ、そう? ならいいけど……じゃあ、さっきの魔術の補足説明ね。ショートカット魔術は八つセットできて使用者の意識に反応してMP消費で即時発動するの。セットされた以外の魔術はメニューから検索しないと使えないから、戦闘中の一瞬の判断を求められる戦いでは入れ替えはしない方がいいわよ」


 説明を聞きながら、増大したMPで使用できる魔術を一覧からセットしていった。


 『インフェルノストーム』、『アイスブリッドストーム』、『カッテングウインドブラスト』、『グランドノック』、『スーパーノヴァ』、『ダークホール』、『エリアオールリカバー』、『エリアエクステンドヒール』の八種をセットする。現状のMPで使用できうる最大火力と回復量の魔術セットだ。


「セットできました」


「オッケー。更に補足で魔術はそれぞれ使用するとクールタイムがあって、消費MPが多いほどクールタイムは長くなっているから、頭の片隅に入れておいて」


「了解です」

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