第7話-星と命芽吹く山-

「小僧どもが。うっとおしく動きおって!」

蛇炎の攻撃をかわし、空中からは藤が、陸地では桜鬼が岩を必死に引きはがす。

藤は飛び上がっては、炎で形作った弓と矢を桜鬼が剥きだした鱗めがけて放つ。空中ゆえにあまり精度は高くないが、それでもじわじわと蛇炎の体力と気力を削いでいく。桜鬼も隙を見つけては飛び込んで棍棒を叩き込む。桜鬼の役割は鎧のような岩を鱗から引きはがすことだったが、それでも剥いだ部分に隙があれば打撃を叩き込む。重い一撃が当たるたびに蛇炎は忌々しく桜鬼を睨むが、気を取られた一瞬に藤の炎の武器ががら空きの部分を焼いていく。

そしてとうとう、尻尾の周囲の鱗が露わになった。先には馬頭首と思われる骨が粘液によって接着されている。

「藤!見えた!尻尾!」

「任せて!」

そういうと藤は炎で鉈を作り出し、羽をはためかせて跳躍する。二人の目的に気が付いた蛇炎が藤から尻尾を離そうとしたが。死角に回り込んだ桜鬼が棍棒を尻尾に振る。肉を叩くような派手な音がした。尻尾は藤の落下地点に来る。

「もらったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

歯を食いしばって藤が鉈を振り下ろした、が──

尻尾は切れない。鉈が尻尾に食い込んではいるが、切断にまでは至らない。

尻尾が派手に上下し、鉈から手が離れた。そしてそのまま藤を尻尾で弾き飛ばし、藤は平野の岩を砕いて地面を滑っていく。

「炎だけじゃ、ダ、メ…だった…か…」

「藤!!」

隙を逃さず、蛇炎の口が藤へと向く。かわそうと動いたがいなし切れず、左腕が食われる。蛇炎はそのまま素早く首を上げ、左右にブンブンと振ると藤の腕があまりの遠心力に肩から千切れ、藤の体が宙に舞う。そのままべしゃ、という音を立てて地面に激突する。

「おい…嘘だろ…藤!!」

駆け寄ろうとするも桜鬼に蛇炎は胴体をタックルのようにぶつけ、桜鬼も藤とは反対方向に飛ばされる。

「まって、ろ、今助け…痛ッ!!」

どうやらあばらにダメージが入ったらしい。肺は無事なようだが言葉を続けるのは困難だった。

「少しはやるようだな。しかし高々数年、数百年生きた程度では我には届かない。大人しくくたばっておれ。今食ってやる!」

ここまでか──そう思った桜鬼の視界の奥に、藤がふらふらと立ち上がる様子が見えた。

(だめだ、無理をするな)

そう口に出したいが声が出ない。蛇炎の口が桜鬼に再度迫ったその時。

藤は残った右腕で突然羽織の胸元を露わにした。するとみぞおちの上、鎖骨の中心辺りが燃えるように真っ赤に染まり、辺りに光を放つ。

「なん…」

「不死の小娘、ここからが本領発揮だな」

蛇炎が楽しそうに舌なめずりをする。そういえば対峙した際に蛇炎は藤に向かって言っていた。「不死を得た程度の小娘」と。あの光がそうなのだろうか。

その光の中から炎があふれ出て、その炎が今千切られた左腕を肩から形作っていく。そしてその炎が動き、振り払うしぐさをすると…

何とそこに新たな腕が生えていた。光と炎が集束する。そしてその中心には、まるでブローチのように紅い半球状の宝石が肌から突き出ていた。

「炎に魅入られた娘。そこまでしてなぜ命にこだわる?あの童たちを生贄にしたところで、お前の命が脅かされるわけではあるまい。村人の無念もお前にとっては関係ない。とっとと妹とやらとこの地を去って放浪していた方が、幾分マシなのは明白だろう。」

「お前に…」

藤の手が蛇炎からはぎ取った岩に触れた。

「お前に、私たち人間の心など、永遠にわかるまいッ!!」

掌が白熱し、岩が溶けていく。再度宝石から炎が溢れ、岩に含まれる鉄を刀の形に削り溶かしていく。そして粗削りな刀を振り上げ、岩の残骸に打ち付けると、岩石の部分がボロッと零れ落ち、ギラリと刃が光る。

「お前は肉も骨も、この火山の溶岩と私の熱で溶かしつくす!」

「人の心、などと化け物風情が。己を人間などという矮小な生き物の枠に収めている限り、我には届かない!!」

蛇炎が藤に矛先を変えた。まっすぐに突っ込んでくる蛇炎を躱し、今までよりも高く跳躍する。

そして手元の刀を振るい、今度こそ尻尾を切断した。侮っていた相手からの一撃は蛇炎の虚を突くには十分だった。わずかな時間呆然としたが尻尾を切られた痛みで咆哮する。そのまま這いずって逃げていく。

藤は桜鬼に切り落とした馬頭首を渡すと背を向けた。

「ここまでついてきてくれてありがとう。まずは目的その1達成といったところ…かな?私はここから本領発揮なんだけど、ついてこれる?」

「あったりめえよ。地の果てまでも追いかけてぶっ倒してやろうぜ!」

藤は羽をはためかせ、桜木は自らの足で、蛇炎を追って駆けだした。



「さーって焼けたかな…と。」

ゼツは焚火に身を乗り出し、火にあぶられている極彩色の魚をつついた。そして中まで火が通ってることを確認すると、串を抜いてその魚にかぶりついた。

「んん~、厄介なお荷物がいないと楽できていいな。」

桜鬼に啖呵を切ったその後、ゼツは離れた場所で休暇を満喫していた。

「ぼちぼちアイツも泣いてこの辺探し回ってるだろうし、そろそろ俺も合りゅ…」

その時壁を突き破って蛇炎が焚火を踏みつぶして反対の壁を突き破って消えた。

「なん、なん…?」

さらに藤が羽をはためかせて高速で駆け抜けた。火山灰が舞い上がり、食べかけの魚とゼツに覆いかぶさる。

「ンだアイツら…」

ご飯時を邪魔され、食事を台無しにされた怒りに瞼がヒクつく。

一人と一匹の蛇が通り過ぎた後、桜鬼が飛び込んできた。肩で軽く息を切らせている。ゼツを見ると顔をパッと輝かせる。

「ゼツ!ここにいたのか!」

「いたのか、じゃねえだろ!テメェら俺の飯を台無しに…」

「ちょうどいいや!お前も来いって!」

「お前、また…!ちょまてって!!おい!!」

桜鬼の怪力には敵わず、ゼツはそのまま引きずられて行ってしまった。


「くそ、どこまで行くつもり…?」

地面を蹴り、再び跳躍し滑空する。山の腹を右に、左にクネクネと進んでいく。桜鬼に気を使って速度を緩めていたが、速度が速いため途中から気にできなくなってしまった。跡が残るだろうから大丈夫だろう、と気を取り直したところで蛇炎が止まり、藤に向き直る。いつの間にか山頂に近い場所に来ていた。

「諦めついた?」

「少しの間に大きな口を叩くようになったではないか。」

蛇炎が地面に尻尾を地面に突き刺して喋った。

「我を怒らせるとどうなるか、今見せてやる!」

ボゴボゴと音が鳴り、蛇炎の体が波打つ。顔を大きく上に持ち上げ口を開くと──

「…!!抵抗すると…!」

藤が言いかけたその時、蛇炎の口から溶岩を纏った岩の塊が、大小さまざまに大量に雨のように降り注いだ。

「まだこんな力が…!」

岩石群をなんとか躱そうとしたが、小さいものがよけきれず炎の羽を貫通し、身を守るために交差した腕にも命中する。穴の開いた羽が消失し、背中から地面に落下、激突した。

「くっ!」

「ハハ、先ほどの威勢はどうした。我を焼いてやるとか聞こえた気がしたが、のう?」

「そのほえ面、すぐに後悔するよ。」

「ほざけ。あの小僧もいないお前に何ができよう。その肉も骨も砕き、我がお前たちを焼いてやる!!」

そして口を開くとまた溶岩弾を吐き散らす。

「あぐッ!!」

傷が治るとはいえ、熱と重さのダメージが無いわけではない。岩に胴体から下がつぶされる。すぐにどけて、グシャグシャになった下半身を再生する…

──暇も与えずさらに溶岩弾の雨が降り注ぐ。大きいものは身をよじって躱すがうつ伏せになった背中に尖った岩が刺さる。

「…っ!!」

腕をばたつかせて引き抜こうとしたが届かない。立ち上がって逃げようとすると蛇炎の口がすぐそこに迫る。

「腹の中で再生と消化を繰り返すがいい。煉獄のようにな!!」

その時人影が藤を抱え上げ、蛇炎の口から救った。蛇炎が砂に突っ込む。

「ったくせっかくの休みだと思ったのによ。飯も何もかも台無しだわ。」

ゼツが藤を雑に抱え上げ宙に舞う。

「あんたは…!」

「礼はあのクソ鬼に言え。俺はお前なんか食われちまっても構わなかったんだがな。」

「別に私だってあんままでよかったけど。食われたら食われたで中から焼いてやるだけだし。」

「蛇に食われたら体もバッキバキで動けるわけねえだろうが。ちったあ考えろよ。」

「そうなの?」

「ったくテメーもアイツと同じパワータイプか。なんなん、俺の周りってこういうやつしか集まんねーのか?」

ゼツが藤を地面に降ろし、手をはたいた。運ばれてる間に再生できた足で藤も地面を踏みしめる。

「不思議な奴だな。さっきまで使いもんになってなかったのに、いったいどういう仕組みだ?」

「生まれたときからこれだからよく知らん。」

桜鬼もようやく追いついた。ゼツが藤の背中に刺さった岩を引き抜く。

「や、やっと追いついた、ごめん藤!大丈夫か!?」

「ちょっとケガしたけど大丈夫。」

「よかったよかった!助かったぜゼツ、あんがと!」

「ホントだわ。自分でどうにかできないならんなモン抱え込むなって言うのに。もうどうでもいーけどさ。ここまで来たら。」

ゼツが蛇炎を見上げる。見ると蛇炎の口が閉じたまま膨れ上がっている。

「ヤバッ!忘れてた。」

「根っからバカなの勘弁してくれ。」

桜鬼の言葉にゼツが返すと同時に蛇炎の口が開き、今までとは倍以上の数の溶岩弾が飛び出し、噴火したような勢いで降り注ぐ。

藤とゼツは軽快に躱し、桜鬼はバットのように振って打ち返す。

打ち返した溶岩弾の一つが蛇炎にあたり、目を回してふらつく。その隙に溶岩弾の合間をかいくぐり藤が滑り込み、猛烈な蹴りを下あごから叩き込む。頭への連撃に、蛇炎はたまらず派手に倒れた。

「っしゃい!!見たか!」

とガッツポーズをしたのもつかの間、後ろを見返り、

「…まずい!!」

そう言って藤が下の方へ滑空していく。桜鬼とゼツが同じ方向を見ると下の方に藤の家が見え、残った溶岩弾が小屋に向かって突撃していく。

「もしかしてこれが狙いだったのか!俺も!」

「バカ!本命から目をそらすな!」

ゼツの言葉に振り向くと、溶岩弾が腹に直撃した。かわし切れずゼツの脇腹にも命中する。

一方の藤は細かい溶岩弾を刀や腕で蹴散らし滑り降りていった。が、小屋への距離はどんどん近くなる。覚悟を決めると炎の羽を一段と強くはためかせ、溶岩弾の群れを追い越すと真正面に向き合う。二、三大きい溶岩弾を弾き飛ばすが、間に合わず刀を捨てて、その後ろの溶岩弾を素手で押しとめる。だが止めている岩を砕いてさらに大きな溶岩弾が現れた。さすがに止めきれず、とっさに拳を突き出すが抵抗むなしく腕がひしゃげ、藤ごと小屋の手前に激突した。

その後は幸いなことに細かい溶岩弾がいくつか小屋の周りに刺さるのみだったが、潰された藤には見えない。

全身から焼けた肉のにおいがする。藤は今までよりも大きい痛みに耐えながら起き上がろうともがいた。今度は全身を圧倒的な質量に押しつぶされ、簡単には再生できない、が、それでも残った意識でゆっくりとケガした箇所を再生していく。

「お姉ちゃん!」

藤の頭が岩の外に出たその時、鈴の声が響いた。小屋の周りで起きた状況を見るために地下から出てきてしまったようだ。子供たちも駆け寄ってくる。

頭から藤をのぞき込み、鈴は涙を流しながらこちらを見ている。


妹が、子供たちが、私にとって大事な人が泣いている──


完全に藤の逆鱗に触れた。藤は再生が終わった腕で岩石を持ち上げ、横にどけた。


─許さない─


鈴たちを後ろに立ち上がった藤の胸元の宝石が赤く光る。背中からゆっくりと羽が生えていく。が、光はとどまることはなく、そのまま輝きを増して白く光る。羽はさらに大きくなり翼となる。炎の色は鮮やかなオレンジから青色へと変化し、熱量が増大した。

そして、

「今日のご飯は蛇だから。まっててね。」

妹たちに笑いかけるとそのまま翼をはためかせて再度、中空に舞って行った。




「少してこずったが、これまでだ。」

顎から真っ赤な血液を流しながら蛇炎がゼツと桜鬼を見やる。

「くっそ…!」

「とんでもねえ化け物敵に回しやがって、あの世で恨むからな。」

「何、ここで言い争うこともあるまいて。すぐに楽にしてや…」

言葉を飲み込み、蛇炎が二人の後方を見つめた。

何事かと思い、二人もそっと後ろを見た。

二人の後方、山の山腹に青く星が輝いている。

「シリウス…?」

ゼツがつぶやくとその光が大きくなる。そして流星のようにすさまじいスピードで現れた藤が真正面から拳を蛇炎にむかってはなった。拳を振り切ることなく、そのまま地面に蛇炎の頭を地面にたたきつけると地面にはひびが入った。

「アイツ…」

「藤!無事だったか!子供たちは!?」

「すんでのところで守れたから大丈夫。こっちも間に合ってよかった。」

二人を起こしながら藤が笑いかける。蛇炎が頭を起こした。今までの戦闘に加えて今の一撃で完全に切れたらしい。

「もう許さん、許さん!!いよいよ全力をもって潰す!!」

そういうと蛇炎が一際高い声で咆哮すると、トカゲ兵士が地面から勢いよく飛び出してきた。

三人は慌てることなく、むしろ余裕をもって向かってくるトカゲ兵士の一団と奥の蛇炎を見やる。

「一気に決着にするよ、行ける?」

「もちろん!こっから最後の大一番だ!」

「とっとと終わらせて飯の続きにしようや。」

藤が桜鬼を抱えて飛び、ゼツはトカゲ兵士と対峙する。

「止まれ。」

そういうとビタッとトカゲ兵士が動かなくなった。

「あんまし長くは持たねーぞ。ちゃっちゃと決めてこい。」

「おう!」

藤が地面に近づき桜鬼を空中で降ろし、再び翼で舞い上がる。

「溶かしつくすッ!!」

藤が両手を突き出すと青い炎の渦が蛇炎を包み込む。今までとはくらべものにならない熱に晒され、纏った岩石が全て溶け、剥がれ落ちていく。

「むき出しなら全力が通るよなぁ!!」

桜鬼が棍棒を振るう。岩に減衰することなく怪力がそのまま伝わり、蛇炎が吹き飛ぶ。

「もう一発行って!」

藤が桜鬼を抱え上げ、蛇炎にぶん投げる。そのまま棍棒を空中で構えなおし、

「おかわり持っていきやがれェェェェェ!!!!」

蛇炎のどてっぱらに追加を叩き込む。さらに吹き飛び、いよいよ火口に迫ってきた。

「最後の一撃よ。用意はいい?」

「ああ!デカイやつ、かましてやろうぜ!」

藤は桜鬼に並び立つと、棍棒に手をかざす。すると手から出た炎が棍棒のまわりを多い、纏う形となる。

そして二人は走り出す。

「飛んでいきやがれーーーーー!!!!!」

超至近距離で炎を纏った棍棒が叩きつけられる。さらに吹き飛び、いよいよ火口が蛇炎のすぐ後ろになる。

「これで終わりよ!!!」

炎を更に大きく纏い、青い不死鳥が姿を現す。そしてまっすぐ一直線に蛇炎に向かい、やがて光となる。そのまま蛇炎に体当たりを慣行、そのまま火口の真ん中まで突き飛ばす。

「たかが、たかが小娘たちごときに…!」

「地獄に行って先に焼かれてなさい」

そして藤は鳥のように舞い上がった。

蛇炎はそのまま火口に落下し──溶岩に消えた。


夕暮れ。

藤は最後の墓標を地面に建てると、桜鬼たちと手を合わせて黙とうをささげる。墓標は藤が蛇炎に捧げた村人たちへのものだった。

「これでようやく肩の荷が下りたか?」

「ええ、やっとね。」

晴れやかな顔で藤が振り向いた。雲の切れ間から差し込んだ夕暮れがその顔を照らす。

「でも、私にはまたやることができた。」

「やることって?」

「子供たちや妹のためとは言え、勝手に村人たちを生贄にした罰。これだけは背負って生きていかなきゃ。」

「俺はそんなことないと思うけどな。勝手なことまた言うようで悪いけど、きっとわかってくれると思う。」

「それもそうかもね。」

二人は小屋の周囲で遊ぶ子供たちを見る。空中でうっとおしそうにあっちこっちに逃げるゼツをキャッキャと追いかけまわしている。

「蛇炎がいなくなった今、この山にはまた命が戻る。草木が芽吹き、鳥も花も芽吹く。そうなって初めて、私はここを離れられるかもしれない。…妹たちも一緒にね。」

「この山がそうなるのに時間はいるだろーけど、見てみたいな!…なぁ藤、もしそうなったら一緒に来てくれるかな?」

「ふふ、多分そのころにはあなた達の旅も終わってると思うけどね。まぁ、考えておいてあげる。」

「おーい、そろそろいこうや。ガキどもがうっとおしくてたまんねーわ。」

遠くからゼツが音を上げる声が聞こえた。

「せっかくだし、今日はお礼もかねてうちに泊まっていきなよ。ご飯も作ってあげる。特別にあの黒いのも入れてあげるから、ね?」

「マジ!?やったぜゼツ!泊めてくれるってさー!」

悪態をつくゼツ、喜ぶ桜鬼、微笑む藤。まだまだ先行きは長いが、その夜は楽しげな声が響いていた。



「ここにいたんですね、ナレフさん」

折れた剣を拾い上げ、フォウルが呟く。

「どこへいってしまったのですか。」

雲に隠れて見えない月を見上げながらまた呟く。


答えは返ってこない、風だけが無常に吹き抜けていく。


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