徴兵
昼過ぎとなり、翔琉はツィルと志願兵達に戦い方や魔法の戦闘時の扱い方を教えた。
「よし、わからないことは?」
「はい」
1人の青年が手を挙げる。
「ウォールブレイクに関しては理解しました、しかしそれ以外の防御についての応用の仕方がいまいち理解に達しません」
「んー、なら実戦でもするか?」
「…! よろしくお願いします!」
勢いよく頭を下げる青年、周りの志願兵等は羨望の目で彼を見た。広場に出て、両者一定の距離を取り睨み合う。
「寸止めの3本先取だ」
「はい」
「行くぞ…」
翔琉は大きく息を吸い地を蹴る。
「?! 早―」
目の前には木刀。
「一本、集中しろ」
「…!」
青年は魔法陣を展開する。
(教えた通りのことはできるてるな)
「だが、甘い」
《魔力を7900消費し、魔術:魔法停止を行使します》
「なに?!」
「よそ見は殺せの合図だぞ」
青年の目の前に木刀が現れた。
「一本、あと1回だ」
「抗って見せろ」
「はあ!!!!!」
青年の攻撃は翔琉には届かず、全てを避けられる。
「くそ!」
「くそ!」
「くそ!」
「くそ!」
「くそ!!!!!!!」
青年は苛立ち始め、乱雑な攻撃ばかりになる。
「血が頭に上ると目が見えなくなるぞ」
翔琉は青年の首筋に木刀を当てる。
「へ?」
「一本」
「終わりだ」
「防御への応用は最も簡単だ」
「攻撃する時と同じ威力で展開し近くに留めておけば、魔法がぶつかろうが銃弾が飛んでこようが守ってくれる」
「理解したか?」
「はい…」
「今日はこれにて終了とする」
「「「ご指導ありがとうございました」」」
訓練兵達は敬礼をし、各々散開した。
「…ツィル、行くぞ」
「はい!」
翔琉はツィルと森で格闘をする。今回は1分でツィルが無力化された。瞬殺じゃ無いだけ大躍進である。
「強いよ〜」
「まぁ、2回目にしてはいい結果なんじゃないか?」
「格上相手に1分粘ったんだからよ」
「んーそうかなぁ」
「あぁそれとなんだが、今日は晩飯はいらん」
「え? なんで?」
「昨日手に入れた力を再確認しようと思ってな」
「分かったわ、調理師に伝えておく」
「頼んだ」
そう言い告げ、翔琉はそそくさと村に戻る。
《関連スキル:隠密行動、視線誘導を行使します》
「誰でもいいから殺して望遠を獲得したい」
翔琉は辺りを見渡す。
「ん? あの女、1人で何してる?」
目線の先には若いエルフがいた。翔琉はそのエルフに近づき声を掛ける。
「何してんだ」
急に現れた翔琉に対して腰を抜かす。
「もう1度聞く」
「何をしているんだ」
「あぁ、救世主様」
「いえ、その…」
「何か罪でも犯したか?」
胸の鼓動が高まる。
「いえ、そのような事は断じて――」
「まぁ……いいや」
《関連スキル:暗殺を行使します》
エルフは死亡し、横たわる。
《関連スキル:視線誘導、認知不能を行使します》
翔琉はエルフをナイフでぶつ切りにする。
《スキル:炎付与を行使します》
「ミディアム…このくらいか?」
「…ハハ」
掠れた笑い声が隠し味。
「…………頂きます」
《スキル:望遠を獲得しました》
《魔力を3800消費し、魔術:消臭魔法、隠蔽を行使します》
「…………ご馳走様でした」
《関連スキル:認識操作、記憶操作を行使します》
「よし」
翔琉は軽い足取りで部屋へ戻る。
〜エルフの村、翔琉の部屋〜
《魔力を300消費し、魔術:消音魔法を行使します》
「ステータス…」
『氏名:
魔力:99982467000
年齢:18歳
職業:ギャンブラー
職業スキル:ギャンブルに必ず勝利する
関連スキル:手品 強制承諾 超記憶 演算超排除
思考超加速 暗殺 視線誘導 動体視力超向上
反射神経超向上 基礎値無限大 上限超突破
読心術超向上 配当計算超向上 駆引力超向上
勝負力超向上 神回避 隠密行動 身体能力超向上
致死無効 復活 超回復 精神汚染超耐性
環境変動超耐性 身体異常超耐性 武術超覚醒
経験値超入手 情報操作 認知不能 戦闘力超向上
人体操作 物質改変 威力超向上 欺瞞 完全妨害
魔法影響超無効 鉄壁防御 全知確認
アンロックスキル:不死 魔力無限 魔法新規作成
世界秩序超改変』
「増えたな…」
「あの毛皮でなんかするか」
《関連スキル:物質改変を行使します》
翔琉は不味くて全て食べ切れなかった毛皮を作り替え、黒いファーフード付き白いトレンチコートを作成した。素材の影響で魔術反射の効果が常時付与されている。
「こんなんもできるんだな」
翔琉は作ったコートを壁にかけ眠りにつく。
_________________________
迷宮攻略をしてから数日が経ち、村を出る日になった。この間に志願兵達は岩を砕ける程まで成長し、ツィルも翔琉相手に5分も持ち堪える程に強くなっていた。
「カケル、入るわよ」
「あぁ」
ツィルが部屋に入る。
「世話になったな」
「うん…」
ドタバタと騒がしい足音が響く。
「族長!緊急です!」
1人のエルフが部屋へ入ってきた。
「どうしたの」
「女王陛下から徴兵の勅令」
「今すぐに兵を纏めて王城へ来いとのことです」
「嘘でしょ」
ツィルは驚愕の表情を浮かべる。
「徴兵って事はこの国戦争すんのか…」
(よし…)
「ツィル、行くぞ」
「うん」
「直ぐに馬車を用意して」
「かしこまりました!」
「戦争かぁ」
翔琉はコートを着ながら感想をこぼす。ツィルと翔琉、エルフの兵士達は馬車を使い高速で城門前に到着した。
「行きましょう」
ツィルの後を翔琉が着いていき、その後ろを兵士達が進む。
「エルフ族族長、ツィル様のご到着です」
門兵が叫ぶと扉が開く。扉の先には奈々もといナナ女王がいた。
「お待ちしておりました」
「ぁ…」
奈々と翔琉は目が合う。翔琉は慇懃にお辞儀をした。
「ではこちらに」
女王の後をツィル達が進み、広い会議室へ入室する。奈々が豪華な席へ座り、声を発する。
「私は先代のマラフェスタ8世より王位を授かりました、我が王国の15代国王であります」
「騎士団の壊滅及びハイベヒーモスの出現、そして急な引き継ぎ式を行ったことによる情勢不安により国力低下が進み、大陸の国際緊張が高まり、先日ドリツ帝国から宣戦布告が行われました」
翔琉は腕を組みながら話を聞く。
「防衛地点は?」
ツィルが質問をする。
「現時点における最重要防衛地点はタラトゥ平野です」
「タラトゥ平野というと地下に大量の石炭が発見されドリツ帝国との領土問題に発展していた場所では?」
「ええ、本来であれば我が王国の領土でありますが騎士団の壊滅を聞きつけて不法に占領を」
「今回の戦争はこの土地をいかに早く奪取できるかにかかっています」
(古来からの領土を勝手に自国領とか言われて領土問題に発展…日本と同じだな)
「エルフの皆様にはそこを守っていただきます」
「それと王立学校の生徒もタラトゥ平野へ向かわせます」
(…学徒出陣ってよっぽど焦ってんだな)
(激戦区にガキつかわせるって…議会か貴族の策だな)
(奈々も大変だなぁ)
「開始時刻は?」
「15:00以降我々から先制攻撃を仕掛けます」
「先日に宣戦布告が行われて、今まで軍事行動はないんですか?」
「ドリツの主要都市からタラトゥ平野までは距離があり、駐留している軍隊は目立った軍事行動は行なっておりません。よって15:00時以降に奇襲攻撃を行う算段です」
「何かしらの罠の可能性も――」
「あー」
翔琉が割って入る。
「ちょっと用事思い出して、出ていいか?」
「貴様無礼だぞ!」
「重要な会議だと解らぬのか!」
髭を蓄えた男が怒鳴る。
「軍務卿、良いのです」
「冒険者カケル、退室を認めます」
「どうも女王様」
翔琉は王城を出て国民の様子を見に行く。
「あれ? カケルさん?」
「…あぁ、久しぶりだなフェル」
側近達に合図を送ると、フェルは1人で翔琉の元へきた。
「お久しぶりですカケルさん」
「なにしてんだ?」
「ドリツ帝国との会議に出席してました」
「ダメだったんだな」
「はい、戦争です」
「…国民はどうする」
「もう少しで総理大臣閣下より戦争開始の旨の放送が始まります」
「なるほど」
「カケルさんは何を?」
「国民の様子を見るついでにギルドに寄ってみようかと」
「わかりました、気をつけて」
フェルと別れてギルドに向かい、冒険者やギルドの関係者達と話をする。どうやら知っている者は知っているようだ。
「…楽しませてもらおうか」
翔琉はギルドを出て王城へ向かう。その道中にアナウンスが王都に響く。
『マラフェスタ王国総理大臣、アルヴェンと申します』
『国民の皆様、ドリツ帝国により宣戦布告が行われました』
『皆様には――――』
「いよいよ始まったな」
〜マラフェスタ王国、王城〜
翔琉は王城に着く。王城内には騎士団が点呼と武器確認を行っていた。
「壊滅からしたら結構増えたな」
「質は悪いけどね」
奈々が翔琉に話しかけた。
「改めて、お帰りなさい」
「帰ってきてくれて嬉しいわ。貴方がエルフの村にいるのは聞いてたけどね」
「筒抜けか」
「ごめんね」
「まぁなんとかうまいことやってるみたいだな」
「高校生にしてはいい運営なんじゃないか」
「戦争になっちゃったけどね」
「子供達まで出動させるなんて…議会の決定には抗え無いわ…」
「安心しろ、俺が何とかしてやるからよ」
「うん」
「頼りにしてるわ」
「俺は学徒とエルフ部隊の隊長にでも就けばいいのか?」
「えぇ、その算段です」
「…細かい作戦は現地の状況と合わせ確認する」
「分かったわ」
マラフェスタ王国とドリツ帝国の戦争が始まった。
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