迷宮


「あ、そうだ」

「大図書館に行かない?」


 水を飲んで口を拭っているとツィルが提案をした。


「大図書館?」


「この森の中心部に超巨大樹があってね、その中にはこの世の殆ど全てが記載された本があるの」

「だから大図書館」


「それは部外者が入って大丈夫なのか?」


「それがね、部外者どころか部内者でも入れないの」


「トラップとかか?」


「えぇ、その図書館は世界3大迷宮の1つだからね!」


「…死者は?」


「3桁超えてたかな?」

「昔冒険者と騎士団による合同探索が行われたの」

「大規模だったわ」

「結果は1階層もクリアすることなく撤退したけどね」


「1階層もクリアしてないのになんで本があるって知ってんだ?」


「えーっとこの村には言い伝えがあるんだけど、それが大図書館の神秘の本のことを言い伝えていたらしくて」


「へぇ」

「で?実際に見たことは?」


「ない」


 ツィルが即答した。


「そんなバカ危険な所に俺を向かわせる気か?」


「カケルなら何とかなるでしょ」


「…」


「そんな目で睨まないでよ」


「んで?今から行くか?」


「授業はお昼過ぎだからそれまでに戻れば大丈夫そうね」


「昨日と違ってまだ3時間ほど時間があるか」

「ちょっと見て帰るくらいにしておこう」


「なら準備ができたら出発しましょう」

「早めに終わったら私の部屋に来て、私の部屋は貴方の部屋の丁度上の階よ」


「あぁ」


 翔琉は部屋に戻り服を着替えた。


「…迷宮ね」


 支度を終え部屋から出てツィルの元へと向かう。


「入るぞツィル」


「いいわよ」


 奥の方からツィルの声が聞こえる。


「ほぉ」


 翔琉の目に映ったのは普段とは違い戦闘用の鎧をつけた姿であった。


「準備出来たみたいだな」


「えぇ、行きましょう」


 ツィルと共に迷宮へと向かう。1時間ほど歩くとそこには超巨大樹があった。


「これだけの距離で村から見えなかったのに近くに来たら見えるようになるとか、なんらかの魔法か?」


「えぇ、この樹全体に魔法がかけられてるわ」


「…ん?」


 翔琉は何かに気がつく。


「この扉の先に部屋があって階段があるんだけど―」


「いや、この樹カモフラージュだぞ」


 話を遮り迷宮の秘密を看破する。


「え?でも実際に中には強い魔物とか宝物とかがあったわよ」


「それがカモフラージュだ」


 翔琉は手を伸ばす。


《魔力を28000消費し、魔術:爆熱を行使します》


 白い炎が樹を覆う。ものの数秒で樹は灰となり、樹が聳え立っていた地面に巨大な鉄板が埋まっていた。


「カケル、貴方本当に無詠唱であれだけの…」


「無詠唱はどれくらいのもんなんだ?」


「日常生活程度の魔法なら誰でも使えるけど、攻撃や防御、回復なんかはレベルが80を超えてやっとできるくらいだったと思う」

「でも、実際は超えていても難しいわ」


「そうか…」

「この鉄板ほ上に乗れば、恐らく地下か別次元かどっかに飛ばされるんだろう」


「行ってみましょう」


「一方通行かもしれない、戻れなくなる可能性もあるぞ」


「カケルは転移魔法が使えるんでしょ?」


「まぁ、使ったことはないが多分な」


「なら行こう!」


 ツィルは魔法陣の中に入ると、魔法陣は発光し始める。翔琉も中に入ると魔法陣はより強く発光した。


「うぎゃ!」


「うぃって」


《関連スキル:環境変動超耐性、身体異常超耐性を行使します》


 目が慣れて辺りの風景が判るようになった。翔琉の目の前には扉とゴツゴツとした岩の壁、そしてうつ伏せになっているツィルの姿があった。


「起きろ」


「いて」


 軽く蹴る。


「うぅ、ここは?」


「迷宮だ」


 そう言いながら翔琉が扉に触れる。僅かな力で扉が開いた。


「押すタイプの自動ドアか」


「自動ドア?」


「置いてくぞ〜」


 翔琉はツィルの質問を無視して先へ進む。


「ま、待って!」


 ツィルは急いで起き上がり翔琉の後を追いかける。


「暗い…」


《スキル:炎付与を行使します》


 翔琉は手から炎を出した。


「松明代わりだ、離れるなよ」


 魔物と遭遇する事は無く、淡々と進んでいく。


「止まれ」


 翔琉はしゃがみ、地面を指差した。


「トラップだ」

「切ったりしたらめんどくさい事になるな」

「慎重に行こう」


「うん」


 しばらく進むと魔物の声が聞こえる。


「聞いたことのない声だな」


「私も」


 翔琉は火を音源に近づける。


「グオオオオオオオオオオオ」


 巨大なホワイトタイガーのような魔物が襲い掛かった。


《関連スキル:神回避を行使します》


「危ねぇ」


《魔力を140消費し、情報確認魔法を行使します》


『スケアリータイガーロード Lv.140

 特性:魔術反射』


《関連スキル:思考超加速、動体視力超向上、反射神経超向上、視線誘導、復活を行使します》

《魔力を200消費し、魔術:手刀を行使します》


「お休み猫さん」


 タイガーロードは一瞬で死亡した。


《アンロックスキルから鉄壁防御を獲得しました》


「すごい」

「素手で倒しちゃった」


「この猫さんの毛皮は剥いで持って帰ろう」


《魔力を320消費し、魔術:保存魔法を行使します》


 毛皮は魔法陣の中へと吸い込まれる。


「先に進もう」


 虎の出現した場所を奥へと進むと巨大な空間に出た。


「すごい広いね」


「ボスでも来んのか?」


 空間の奥には1つの箱がある。


《関連スキル:致死無効、復活、超回復、精神汚染超耐性、身体異常超耐性を行使します》


 翔琉は警戒しながら箱を開ける。中には1枚の紙が入っていた。


「手紙?」


 紙を手に取り、書かれている文をツィルと共に読む。


『おめでとう、君はこの大迷宮を見事攻略した。

 褒美として関連技能を授けよう。

 この紙を食べなさい。

      レイティ・ドン・ビクスワール』


「「え?」」


「もしかして」


「さっきの猫さん」


「「このダンジョンのラスボス?!」」


「やっちまった」


 迷宮に到着して20分で攻略してしまった。


「3大迷宮が数十分で…」


「なぁそれより」

「このレイティ・ドン・ビスクワールって誰だ?」


「えーっと確か数千年前の大戦で勝ち残った10家のビスクワール家当時の当主…だったかしら」


「なるほど…で? この紙を食えって?」

「…よし」


 翔琉は紙を食べる。山羊のような事をしていると思いながら、紙を食べ終えた。


「不味…」


《関連スキル:全知確認を獲得しました》


「んㇰ!」


 翔琉の脳内に大量の情報が流れ込む。


「う、ぅぅぅあぁぁ」


 頭が割れるほどの情報量は翔琉の脳に浸透した。


「はぁ、はぁ、はぁ」


「大丈夫?」


《関連スキル:超記憶、全知確認を行使します》


「…」

「ハハ、なるほど本ってのはこの力の事か…」


『氏名:頂(いただき)翔琉(かける) Lv.188


 魔力:99937159280


 年齢:18歳


 職業:ギャンブラー


 職業スキル:ギャンブルに必ず勝利する


 関連スキル:手品 強制承諾 超記憶 演算超排除

 思考超加速 暗殺 視線誘導 動体視力超向上

 反射神経超向上 基礎値無限大 上限超突破

 読心術超向上 配当計算超向上 駆引力超向上

 勝負力超向上 神回避 隠密行動 身体能力超向上

 致死無効 復活 超回復 精神汚染超耐性

 環境変動超耐性 身体異常超耐性 武術超覚醒

 経験値超入手 情報操作 認知不能 戦闘力超向上

 人体操作 物質改変 威力超向上 欺瞞 完全妨害

 魔法影響超無効 鉄壁防御 全知確認


 アンロックスキル:不死 魔力無限 魔法新規作成

 世界秩序超改変』


「…………帰ろう」


 翔琉はツィルの腕を掴む。


《魔力を90000消費し、魔術:転移魔法を行使します》


「ぅぃだ!」


「っつぇえ」

「転移後に負傷するのは確定事項なのか…?」


 2人は翔琉の部屋に転移した。


「うぅ、ほ…本当に転移魔法使えるんだね」

「この国でも使える人は国王より慎重に守られてるよ」


「魔力が10万を超える人間は数百年に1度らしいからな、死ぬまで過保護だろうさ」

(全知確認でも知り得ない事象が幾つかあったな、神に関すること、転移者に関すること、なぜ俺は他の転移者と違うのかという事とか)


「ぁー、今丁度お昼くらいだね」


「休憩してから授業にしよう」


「わかりました、よろしくお願いします」


 ツィルが畏まった口調で返答し、部屋から出た。翔琉は保存していた毛皮を取り出す。


「とりあえず、食うか」

「…不味」


《スキル:魔術反射を獲得しました》


 残った毛皮をもう1度保存する。

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