滞在


「カケル、入るわよ」


「あぁ」


 翔琉の許諾を得て、ツィルが入室する。


「早速だけど、なんで私の攻撃がバレたの?」


「茂みの音がした後にまだ青い葉が落ちて来たからだ」


「それだけで?」


「そして、敵を木の棒を持った丸腰同然の男と思ったことだ」


「うぅ」

「でも―」


「でもでも言ってるから負けたんだろ?」


「…はい」


 ツィルは頭を下げて反省する。


「望遠は強い、遠くから敵を把握できると言うのは奇襲を行いやすいと言うことだ」

「狙撃術があれば超遠距離射殺ができる」

「だが、今回お前は望遠で俺の位置を把握しただけで、あとはゴリ押し」

「勿体ない」


「でも、私は銃を持ってないわ」


「俺なら望遠を使い常に相手の動きを把握する」

「遠距離魔法でも撃って回避行動を予測して攻撃するだろうな」


「それは貴方だから出来るのよ」


 ほっぺを膨らませて抗議する。


「お前にも出来るようにする約束だった気がするんだが?」


「…………」

「明日に個別で教えてもらうのは厳しそうね…」


「まぁ、明後日辺りだな」


「…うん! ごめんね我儘聞いてもらって」

「明日もよろしく」

「おやすみなさい」


 ツィルは部屋から出ていった。


《魔力を300消費し、魔術:消音魔法を行使します》


「…はぁ」


 翔琉はベットに横になる。


「まだ転移してから1ヶ月ほどか…」

「もう1年くらいな気がするぞ」

「レベルと引き換えに金が手に入るし、経験値とかカウント表示すらされてねぇし」


 翔琉には600000Telほどの現金がある。クエストをクリアして稼ぐ必要がなく、冒険者という役職ながら何不自由が無いのだ。


「奈々は今頃何してんだろうか」

「案外うまくやってるんだろうか」


 翔琉の瞼が重くなっていき、意識が遠のいていく。


「眠いな」


 しかし、その眠気は冷める事になる。翔琉の布団がガサガサと揺れ出したのだ。


「は?」


 翔琉は布団を捲る。そこにはツィルがいた。


「何してんだお前」


「いや、その、なんというか」

「中々…そう言うのがないから…」


「出てけ」


《魔力を360消費し、魔術:念動魔法を行使します》


 もじもじしていたツィルは宙に浮かび、部屋から追い出される。しかし、また入って来た。


「なんなんだよ本当」


「私も女の子なんですよ」


「そりゃそうだ疑ってない」


「この村の男は私は『族長様』としか見てないんですよ」


「うん」


「…だから」


「俺が抱けって?」


「………」


 頬が赤らむ。


「却下だ」


「え」


「いや、性欲が湧かん」


「うそ」


「どちらかと言うと今は知識欲が勝ってる」


「え、ちょ」


「バイバイ」


《魔力を360消費し、魔術:念動魔法を行使します》


 2度目の光景。


(何か使って脅さねぇと…)


 ツィルがまた入室する。


「お前本当なんなんだよ」


「この際はっきりと言わせてもらうわ」

「一緒に寝ましょう」


「人の話をだな―」


「貴方はもう人の域を超えているじゃない」


「何言ってんだ」


「私、今年で320歳なの」

「でもまだキスすらしてないの!」


「拗らせてんだな」


「好きで拗らせてるんじゃないの」


「だが却下だ」


「むー! えーい”睡眠魔法”!!!」


 翔琉は眠気に襲われる。


「あ…クソ、魔法耐性…………かく、得sて…………………な」


 翔琉は崩れるように眠った。


「不意打ちは効くんだ…」

「会った時から思ってたけど、本当女の子みたいな顔…」

「羨ましいなぁ」


 ツィルは翔琉の首にキスをする。


「おやすみ、カケル」


_________________________


 夜が明け、旭が翔琉の顔とベッドを照らす。


「んんん」

「んぁ、おはよう俺」


 翔琉は起き上がる。隣には半裸のツィルがいた。


(俺は何をやったんだ?)


 起こさないようにベットから降りる。


「よし、逃げよう」


《アンロックスキルから魔法影響超無効を獲得しました》


「…一足遅い御都合主義め」


 翔琉は物音を立てずに部屋から出て、広場へと向かった。


「ステータス確認」


『氏名:頂(いただき)翔琉(かける) Lv.168


 魔力:91351046170


 年齢:18歳


 職業:ギャンブラー


 職業スキル:ギャンブルに必ず勝利する


 関連スキル:手品 強制承諾 超記憶 演算超排除

 思考超加速 暗殺 視線誘導 動体視力超向上

 反射神経超向上 基礎値無限大 上限超突破

 読心術超向上 配当計算超向上 駆引力超向上

 勝負力超向上 神回避 隠密行動 身体能力超向上

 致死無効 復活 超回復 精神汚染超耐性

 環境変動超耐性 身体異常超耐性 武術超覚醒

 経験値超入手 情報操作 認知不能 戦闘力超向上

 人体操作 物質改変 威力超向上 欺瞞 完全妨害

 魔法影響超無効


 アンロックスキル:不死 魔力無限 魔法新規作成

 世界秩序超改変』


(不死に魔力無限とか、トップに表示されてるのは獲得すんのムズイんだな)

「世界秩序超改変…か」


「「「おはようございます」」」


「?!」


 翔琉は急な挨拶に驚く。


《アンロックスキル:危機超察知、気配超感知、殺気確認》


 視界に情報が映った。


「………あぁ、おはよう」

「と言うか、今日も昼からだぞ」


「朝練です」


「………座学の途中で寝ることのない程度にしとけよ」


「「「はい!」」」


 訓練兵達は敬礼をしたのち、歩き出した。


(本気も本気か、あの目は軍人の眼と似ている)

「飯でも食うか」


 翔琉は食堂へと向かう。食堂の席には既にツィルが座っていた。


「あ」


「おはよう、カケル」


「…肌艶がいいな」


「そうかな?」


「深くは聞かん」


 2人は朝食を食べ始め、すぐに完食した。

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