遭遇
そこから1ヶ月程が経ち、翔琉は王都を出立した。既に隣国を目指し、2日が経っている。
「隣国が遠い!」
「当然だが…地図買ってくればよかったな」
「王都から出たってことだからまだ王国内…何日掛かるんだろうか」
翔琉は夜営の支度をしながら愚痴った。野営に必要なテントは【魔術:設営】を使い行える為寝床には困っていない。
「…野営にも慣れてきたなぁ、ん?」
攻撃を剣で受け止める。
「いきなりは失礼だろうが…!」
ブーメラン。
「って魔物か…初めましてだな!」
剣で魔物の攻撃を弾く。どの攻撃も爪を使った斬撃だった。
「はぁん、爪の長さを変えれるのか」
(全体的に赤黒く、目は黄色に光っている。背中には想像通りの禍々しい羽、知能は感じ取れない…)
翔琉は冷静に対象を分析する。
《魔力を140消費し、情報確認魔法を行使します》
『レッサーガーゴイル Lv.30
特性:爪伸縮』
「…行くぞ」
「グキャアアアア」
金属音が真夜中の草原に響く。
《関連スキル: 基礎値無限大、上限超突破、武術超覚醒、経験値超入手、戦闘力超向上を行使します》
「よいしょお!」
ガーゴイルの首がもげる。
「ふぅ、今日はレッサーガーゴイルの丸焼きだな」
翔琉は野営の準備を終え素材を使い調理を始める。出来上がりはジビエ料理だが、匂いは香ばしい。
「美味」
「想定外だなぁ」
《スキル:爪伸縮を獲得しました》
《アンロックスキルから人体操作、物質改変を獲得しました》
「…魔族食うと特性を獲得できるのか」
「やべぇ、てことはスライム食ったら粘液体になるのか」
「キモいなそれ」
翔琉は魔族と人を食べ終え、テントで眠る。
_________________________
時間が経ち、旭が翔琉の顔を焼いた。
「んんん」
「おはよう俺」
翔琉は起き上がり、テントを消す。
「…行くか」
(胸の辺りがゾクゾクする、マズイなこの感覚は…)
暫く歩いていると人影が見えた。翔琉は聖殺大剣を抜き、刺し込む体制に入る。
「…」
「ㇰ……」
人影が近づく度に心臓の鼓動が速くなる。翔琉が鼓動と葛藤していると、その人影が近付いて来た。
「女の子…? 大丈夫?」
麗しい女が声を掛ける。
「あ?」
「女だと? 俺は男だ!」
「それは失礼、私ツィル」
「よろしくね」
《魔力を140消費し、情報確認魔法を行使します》
『ツィル=ティトゥス Lv.25
特性:望遠』
「エルフか?」
「ええそうよ」
「それより、なんで剣を持ってるの?」
「人影が見えたから警戒のためにな」
「なるほど」
「ねぇ、それより旅人さんでしょ?私たちの村によってく?」
「どう言う意図だ?」
「…こんな場所に1人でいたら心配になるでしょ」
「成程…」
「というか、エルフって部外者に対して厳しいと思ってたんだが」
「それは一昔前のイメージだよ」
「へぇ」
「なら、少しお邪魔させてもらおうかな」
「分かったわ」
翔琉はツィルの後を着いて行く。
「何しに態々あんな草原に?」
ツィルに質問をしながら、茂みをかき分けて突き進む。
「なんか魔物が現れたらしいから調査を兼ねてね」
「結果は?」
「なーんにも無かったわ」
「でも私達の村に来る予定の荷車が来てなかったから襲われたと思ったんだけど」
「…道にでも迷ってるんだろう」
「そうかな〜あ、着いたよ」
「ここが私たちエルフの村」
「すげぇ」
エルフの家屋は巨大樹に建設され、建物間に橋が通っている。翔琉は重力を無視した設計に感心した。
「………」
「ツィル、その男は誰だ」
「あ、じじ様」
杖をついた老人が現れた。
「ジジイ?」
「じじ様! この村を何千年も守ってきた超偉い人だよ」
「お、それは失礼したな」
翔琉は頭を下げる。
「彼は旅人さんでさっき出会ったの」
「えーっと名前は…」
「あぁ、カケルだよろしく」
《魔力を140消費し、魔術:情報確認妨害魔法を行使します》
(妨害だと?つまり、このジジイ俺の基本情報を盗み見ようとしたってのか?)
(クズめ…!)
ブーメラン。
(なんじゃこの若人、情報確認を妨害したじゃと?)
「まぁ、ゆっくりしていくと良い」
「どうじゃ、ワシの家にでも」
ツィルの顔を見ると笑顔で頷いた。
「ああ、失礼するぜ」
翔琉はツィルと共にじじ様の家へと赴く。
「そこらへんに腰掛けてくれ」
2人は適当な場所に座る。
「旅人さんや、嫌じゃなければワシの占いを受けてみないか?」
「じゃあ、頼もうか」
じじ様は小箱の中から水晶玉を取り出す。
「本格的だな」
「この村、いや、この国1番の占い師だからね」
じじ様は謎の祝詞を読み上げ、占いを始める。
翔琉はツィルと共に水晶玉を覗く。水晶玉には曇天の空の下大量の軍勢を引き連れながら進行する魔王の姿があった。
「これは…」
水晶玉はまた別の光景を映す。そこに映ったのは転移者達が何者かと戦う姿があった。
「これは誰だ?」
「わからん、ただ、この者は魔王より凄まじいオーラを放っておる」
「ま、魔王より強いのがいるって?」
「そんなの世界の終わりだよ」
「…」
水晶玉はまた別の光景を映す。魔王と戦う謎の老人が戦う光景。両者の剣がぶつかり合う瞬間に水晶玉が割れた。
「なに…!」
「割れた…?」
「これは、いかん」
じじ様は慌て始める。
「なぁ、水晶玉が割れるってことは何か意味があんのか?」
「…水晶玉は未来を映す、割れたということはつまり未来がないということなんじゃ」
「「未来がない」」
ツィルと翔琉は顔を見合う。
「なんとかできないの?じじ様」
「こればかりはもう」
「いますぐにでも国王に報告しないと!」
「やめといたほうがいいぞ」
「王国は今女王が統治してる。引き継ぎやらなんやらでゴタゴタしててエルフの占いなんか相手にされねえぞ」
「そんな!じじ様の占いは100%当たるんだよ!」
「この世に100%なんてあるわけねぇだろうが」
「じゃあどうするのよ」
「…少なくともあと2週間は待つ必要があるな」
「2週間以内に魔王が攻撃を始めたらどうするの!」
「おい、ジジイ」
「その占い結果はいつ頃だ」
「分からんが、数年以内に大規模な侵攻はないだろう」
「だとよ」
「心配する気も分かるが、落ち着かねぇと話にならねぇぞ」
「…わかった」
(魔王とそれより強い存在…)
「2週間後、一緒に着いて行ってやろうか?」
「いいの?」
「暇だしな」
「分かった、お願いするわ」
「あと…いきなりだけど、2週間この村に泊まっていく?」
「良いのか?」
「私これでも族長だし」
「は?」
「本当だよ」
「まぁ、そういうことにしてやる」
「本当だよ!」
「で、俺の部屋は?」
「えらく、図々しいね」
「それが俺だしな」
「フフ」
ツィルは翔琉を連れて部屋へと案内する。
「はい!ここがカケルくんの部屋、VIPルームだよ!」
「ほぉ」
「確かにVIPって感じだな」
(トイレ、風呂、ベット。どれも清潔に保たれていてとても素晴らしい。日本人として清潔は命よりも大切だからな)
「VIPとかいう割には扉とかないんだな」
「エルフの村に扉はないわよ」
「セキュリティとか大丈夫なのか?」
「ええ大丈夫よ」
「…じゃあ2週間お邪魔させてもらう」
「うん、ようこそ我が村へ!」
腕を大きく広げて歓迎するツィル。
「…!」
「ツィル! 伏せろ!」
「へ?」
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