残虐♦︎


 〜マラフェスタ王国王都、高級宿〜


 宿に戻り、翔琉は風呂に入る。


「レベル上げには魔物討伐とかか……」

「ギャンブルした方が上がり易いんだろうが…ギャンブル好きじゃないしな」

「効率良く動く為に、なんかの組織を作るのも悪くないかもな」


 翔琉が浴室から出ると、脱衣所に見知らぬケモ耳のロリがいた。


「は?」


「ひゃあああ!!」


 目を覆うケモ耳。翔琉は最大限の警戒をする。


「なんだお前」


「あわわ、私、フェルフィーナって言いましゅ」


 甘噛み。


「あっそ、で? フェルフィーナはなんで俺の部屋にいる?」


「えっと、それは」


 フェルフィーナは回答を渋る。


《関連スキル:認識操作を行使します》


「もう1度問うぞ、お前は何をしに俺の部屋に来た」


「…私はカリバン公爵家の奴隷で、陛下との勝負を無かったことにするために貴方を殺せと命じられて来ました」


 すんなり全てを話した。


「暗殺か…」

「それはそいつの独断か?」


「……はい」


 フェルフィーナは全てを白状する。


「取り敢えず脱衣所からでろ」


「…」

「すみません!」


 体を拭き着替えた後、翔琉はフェルフィーナをソファに座らせてコーヒーを渡す。


「毒はない」


 フェルフィーナは渡されたコップの中に舌を入れる。苦さのあまりビクンと飛び跳ねた。


「お前はこれからどうするんだ?一応言うが、暗殺しにきた奴を生かして帰らせる奴はいない」


 尻尾と耳がピンと張る。


「…この国では獣人は奴隷なのか?」


「いえ、この国、と言うより今の社会では奴隷は懲役刑に相当する犯罪です…」


「…貴族め」


 翔琉は頬杖をつく。


「そうだな」

「お前には俺のスパイになってもらいたい、内情を探るためにな」


「スパイ、ですか」


「あぁ、なれば死ぬ事はない」


 フェルフィーナの目を睨む。


「…わかりました、私お兄さんのスパイになります」


《魔力を140消費し、情報確認魔法を行使します》


『フェルフィーナ・アルカ Lv.17

 年齢:14歳』


(獣人の14って人間の何歳相当なんだ…?)


《魔力を60000消費し、魔術:隷属魔法を行使します》


「?!」


 自動発動された隷属魔法に翔琉は驚く。


「へ?!」

「なに?!」


 フェルフィーナの首に魔法陣が出現しチョーカーの様なものが付けられていた。


(なぜ隷属化を…)

「!」


 胸の鼓動が高まる。肋骨を折るほどの強さで心臓が動いている。


「…それを壊そうとか、俺を裏切ろうとしたらお前の首がゴロンとした後に床とキスする事になるだろう」


「な、なんでこんなものを!」


「……黙れ」


「う、っく」


 チョーカーが首を締め上げる。翔琉への反抗は認めない。


「部屋から出てカリバン公爵家に向かい、魔王に関する文献、転移者、俺への暗殺計画、重要書類等全て持ち出せ」

「誰にも見つかるなよ」


「……わかりました」


 悲しげな表情を浮かべ、フェルフィーナは部屋を出て行った。


_________________________


 数時間経ち、翔琉の口が寂しくなってきた。胸の鼓動は少しだけ収まっている。


「…食堂にでも行くか」


 翔琉が部屋の戸を開けると、小さな体で大量の書類を抱えて息を切らしている傷だらけのフェルフィーナが立っていた。傷口は瘡蓋になっておらず、血が流れている。


「…」


 翔琉は首を動かし「入れ」のジェスチャーをした。フェルフィーナは静かに入室する。


「…持ってきました、そして、カリバンの屋敷を強襲し全員殺しました」

「周囲には気づかれていません」


「よくやった」


 フェルフィーナの頭を撫でてあげる。


「ありがとうございます」


 尻尾が左右に揺れた。安堵しているらしい。


「怪我は治せるか?」


「いえ…魔力がもう無くて」


「そうか、待ってろ」

「…!」


 心臓の鼓動が再度高まる。胸を裂いて飛び出てきそうな程に心臓が鼓動している。


(なんだ…これは…)


 そして、1つの案が翔琉の脳に浮かび上がった。今までの生活では考えもしなかった案である。


「…」


《魔力を300消費し、魔術:消音魔法を行使します》


 翔琉は部屋に完備されている冷蔵庫から塩を取り出す。


「お兄さん?」

「…!」


 恐怖で全身の毛が逆立つ。フェルフィーナは翔琉が1歩近づく度に後退りをする。


「動くな…」


 チョーカーがフェルフィーナの首を絞める。


《魔力を300000消費し、魔術:延命魔法を行使します》


 首が締まり身動きが取れなくなっていると、翔琉はフェルフィーナを押し倒して傷口に塩を擦り付けた。


「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!」


 言葉にならない悲鳴。だがその悲鳴は何の価値にも役にも立たない。白目を向き、涎と鼻水を垂らし気絶する。


「…ケモ耳と会ったら試したいことがあった」

「耳は人の耳も持つのか持たないのか」


 翔琉はフェルフィーナの横髪をかき上げる。


「無いのか」

「だったらこの剣の切れ味を試すついでに耳穴を作ってやろう」


 剣で側頭部を抉り始めると、気絶していたフェルフィーナは目を覚まし、暴れ出した。しかし力も体格も違う相手に叶うはずもない。


「右耳完了」


 眼球が耳穴から露見している。


「ゃ、め…t」


 翔琉が血を拭き取った剣をフェルフィーナの顔に近づける。


「次は――」


 新しい耳穴を作ろうとした時、扉が勢いよく開く。開けた主は奈々だった。


「?!」

「何をしてるの!!!」


 奈々が制止に入る。

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