今後


「でもよ、どうして魔王の事なんか?」


「いやぁ、最近耳にして」


「そうか」


《スキル:詐欺を獲得しました》


(物騒な名前のスキルだな)


 翔琉はガイルと分かれ、街を歩く。少し遠くに城が見えた。先程ガイルが言ったことが事実ならば、あれは王城である。


「行ってみるか」


 〜王城門前〜


「すげぇ、皇居のも凄かったが、また別格の威厳だな」


《関連スキル:隠密行動を行使します》


「…入って、いいんだよな?」


 翔琉は門兵の隣を素通りする。


「ガバガバじゃねぇか」

「…なら、あの見るからに本丸っぽいとこ行くか」

「うーん、一応念の為」


《関連スキル:視線誘導を行使します》


「取り敢えず窓から入るか…また高ぇとこにあんだな」


 翔琉は壁をよじ登り窓から室内を覗く。


「なにやってんだ?」


 室内には貴族や国の重鎮と思われる人物が跪いていた。部屋の奥には玉座があり、側近と思しき人物が立っている。

 数秒ほど待つと、側近が声を発する。


「マラフェスタ8世国王陛下の御成!」


 その発生の後に国王が扉から現れる。


「あの肥えたおっさんが国王陛下か」

「良い生活してんだなぁ」


 第一印象の感想を述べていると国王が口を開いた。


「此度はよく集ってくれた、我が国家にとって重大な事が起きた」


「…Sランクが死んだことか?」


「余の国に魔王を討ち滅ぼす使者が現れた!」


 驚きの声が上がる。


「…?」


 翔琉は自分のことではないかと心配する。が、その心配は杞憂であった。


「此処へ参れ!」


 国王の声とともに扉が開き、"使者"が入室する。


…?」

「アイツ!」


 翔琉は入場した人物の顔を見て驚愕する。


「なんだ?この国の周辺に皆転移したのか? だが、アイツ1人の入室ってことはアイツしか見つかってないのか…だとしたらアイツは自分で『転移者だ』とかほざきやがったのか? 命知らずにも程があるだろ…」


「我ら人類を救う為に、神から仰せつかった使者が降り立ったと各国の神官が報告した、その使者が、余の国に降り立ったのだ!」

「これは吉報だ!我が国は卑劣な魔族どもに勝利する!」


「「「「「おおおおお」」」」」


 歓声が響く。


「卑劣な魔族…ねぇ」

「人間は電気を作る為に森林を伐採し、川を堰き止めて海を埋め立て、石炭を燃やし、山を削り、それで作り上げた電気を電気自動車に使う…そしてそれをエコだと言い張るふざけた奴ら」

「そんな種族とどっちが卑劣だ…」

「腹が立つ…!」


 1度口から言葉が出れば言いたい事を全て吐くまで終わらない。怒りを抑え、我に帰る為に深呼吸をする。


「…」

「アイツに会いに行くか」

「…の前に騎士団を見に行ってみるか」


 翔琉は先程の宿で会った騎士団長を改めて見に行く。


 〜騎士団総本部〜


 白く塗られた壁に青い屋根が特徴的な建物である。窓から中を見たが、それらしき人物もいなければそもそも人がいなかった。


「…え? 皆外勤なのか?」

「うーん」

「…お、あれは武器庫か」


《関連スキル:隠密行動を行使します》

《魔力を8000消費し、魔術:認識不能魔法を行使します》


 翔琉は窓を破り、建物の中へタダで武器を得る為に入った。武器庫と書かれた扉の前に立ち、ドアノブを捻る。が、開かなかった。


「…」


《魔力を10000消費し、魔術:解錠魔法上級を行使します》


 再度ドアノブを捻るが開かない。


「なんだよ…」

「なんで開かないんだ!」


 翔琉が扉を蹴るとガチャリと音を立てて扉が開いた。


「…まぁいいや」


 武器庫には多数の武器が安置されている。翔琉に武器の知識はあまり無いが、どれも職人に作られた職人技の代物であると理解した。


「すげぇ…」

「あれは、なんだ」


 翔琉は隠されるように置かれている剣と銃を見つける。警報などの可能性も考え、慎重に取り出す。


「すげぇな」

「銘とかは……あった」

「聖殺大剣……死屍…掃滅?」

「物騒な名前だな」

「まぁいい、ありがたくもらって行こう」

「ここは異世界なんだ」

「何が起きるかわからないし、少しくらいならな……」

「さっきのところに戻るか」


 翔琉は騎士団総本部から出て、先程の演説が行われていた場所に戻る。


「さっきの演説はもう終わりか」


 戻ってきたが、先程までいた者達はおらず、伽藍堂という言葉がふさわしい有様だった。


《魔力を150消費し、魔術:捜索魔法を行使します》


「えーっとアレが…アイツか」


 翔琉は使者のいる部屋へと向かう。


 〜客室〜


 誰にも気づかれずに部屋へ入り、使者の背後へと回る。


「よぉ」


「?!」


 使者は驚き、反射で剣を構える。


「…クラスメイトの声をそんなにすぐ忘れられても困るんだが?」


「い、頂(いただき)?」


「さっき振りだな、野田山(のだやま)…」

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