進路
運が良いことに街へ繋がる道路があった。翔琉はその道を進み市街へと辿り着き、翔琉は1番綺麗な宿屋へと向かう。
〜高級宿〜
「いらっしゃいませ、お客様は当店のご利用は初めてでございますか?」
宿屋のロビーに入り受付へ行くと、スーツを着た男に話しかけられる。
「あぁ、取り敢えず1ヶ月泊まりたい」
「1ヶ月となりますと20万Telとなります」
男が料金早見表を見せてきた。
「は?」
(ぼったくりじゃねぇか…今こそ職業スキルを使うべきだな)
「…この店のオーナーを呼んでくれ」
「…?」
「かしこまりました」
一礼した後、バックヤードへと入っていった。
「どうかされましたかお客様?」
翔琉がロビーのソファで座っていると、肥えた中年が現れる。
「1つ頼みを聞いてくれないか?」
「可能な範囲内であれば、何なりとお申し付けくださいませ」
「コインを弾いて裏ならタダ、表なら1ヶ月分の料金で1泊させてくれ」
コインを手で転がしながら賭けを提示する。
「っ?!それは………」
「トスはそこのボーイにやらせる」
オーナーの反応を無視し、条件を付け足す。
「?!」
ボーイは翔琉とオーナーの会話に無関係だと思っていた為、声こそ出さなかったが明らかに驚愕していた。
「どうだ?やるだろ?」
「いや、その…」
オーナーは渋る。一泊で1ヶ月料金はぶっちゃけ素晴らしい話。しかし、いかんせん怪しい。
「もう1度聞く…やるよな?」
《関連スキル:強制承諾を使用します》
「はい…やらせて…いただきます」
険しい顔を浮かべていたが、スンとした表情へ戻った。
「そこの君、早くしなさい」
オーナーがボーイに命令する。
「は、はい!」
ボーイは翔琉からコインを受け取り、コインに細工が為されていない事を確認する。
「…参ります!」
コインを弾き、手の甲で受け止める。ゆっくりと手をどけると、コインの模様が見えた。
「う、裏…です」
翔琉は無料で高級宿に泊まる事になった。
「ごちになるよ」
冷や汗をかいているオーナーを馬鹿にする目で見た後、部屋へ向かう。
部屋に入り、ベッドに腰をかける。
「ひとまず死ぬ事は逃れたな」
《経験値がが一定となりました、レベルアップを行います》
《レベルが上がりました、現在のレベル18》
「結構…」
《スキル:剣術、柔術、射撃術を獲得しました》
「何もして無いのに武術を…?」
「俺以外の奴も当然転移してるだろうが、こんなバグみたいなことも同じく起きてるのか?」
謎は深まる一方。
「…ふむ」
翔琉は口が寂しくなり、食堂へと向かう。
〜高級宿、食堂〜
「貴様!」
「なんだやんのかこの野郎!」
品のある食堂には似合わない乱闘騒ぎが発生していた。
「なんだ?」
「なぁ、何かあったのか?」
翔琉は傍観していた宿泊客に尋ねる。
「いや〜ガン付けたとかなんとかで」
「あー」
(…止めた方が益が多い、か)
「しかし彼らも相当の実力者なのにっておい!」
「なぁ、お前ら喧嘩は——」
仲裁に入ろうとすると翔琉の顔に拳が左右から迫ってきた。
《関連スキル:身体異常超耐性を行使します》
鳴ってはいけない音が聞こえる。翔琉は無傷だが、2人の男の手は腫れ上がっていた。
「「?!?!」」
《経験値がが一定となりました、レベルアップを行います》
(…逐一うるせぇんだよ)
《次回以降アナウンスは停止します》
(融通が効くんだな…)
「あー、えっと2人とも大丈夫か?」
「「…!」」
2人は携えている剣に手を掛けていた。
「おい見たか?」
「ええ」
「あの女の子、Sランク冒険者と騎士団長様を」
「魔族じゃないの?」
ひそひそと話し声が聞こえる。
「は?」
(俺を女の子?声の低さと背丈で判るだろ、俺が男だって)
「おい、お前ら」
呼び掛ける声は苛立ちを含んでいた。
「「…」」
警戒を続ける2人。その眼は人外に向けるもの、あるいは生ゴミ。
「冒険者と騎士団長なのか?」
「あ、ああ」
騎士団長と思しき男が返答をした。
「そうか、悪かったな骨折させて」
「直してやるよ」
(どうやって魔法使うんだ?)
掌がピンク色に発光する。
(これが回復魔法なのか?)
「「おお」」
2人はどうやら感心したらしい。無詠唱で魔法を使ったからか、単純に可愛い子に魔法をかけてもらったからか。
「早速なんだが」
「俺も冒険者になりたい」
「ぼ、冒険者のような低俗な職より我々名誉ある騎士団に…!」
「おいこら貴族もどき!彼女はな、冒険者になりてぇつってんだ、とっとと失せな」
「冒険者の方がいいな」
「騎士とか書類仕事多そうだし」
偏見だけで将来の進路を決める。
「へっ」
冒険者はドヤ顔を騎士団長に向けた。
「…冒険者など!」
騎士団長は苛立ちながら食堂を立ち去る。
「固いねぇ相変わらず」
「さてと」
「俺はSランク冒険者のガイルってんだよろしくな」
ガイルが握手の為に手を差し出す。翔琉は差し出された手を見つめるだけで握手はしない。
「…」
気まずさに耐え切れず、手を引っ込める。
「…俺はカケル」
「この街には来たばかりだ…それと、俺は男だ」
最も肝心な情報をガイルに伝えた。
「お、それはすまん」
「なら早速ギルドへ行くか!」
(ギルドって本当にあるんだな)
翔琉はガイルの後を追い、宿を出て冒険者ギルドへと向かう。
(そういや、さっきのレベルアップでスキルって手に入ったのか?)
(ステータス…確認?)
『氏名:頂(いただき)翔琉(かける) Lv.39
魔力:9683000
年齢:18歳
職業:ギャンブラー
職業スキル:ギャンブルに必ず勝利する
関連スキル:手品 強制承諾 超記憶 演算超排除
思考超加速 暗殺 視線誘導 動体視力超向上
反射神経超向上 基礎値無限大 上限超突破
読心術超向上 配当計算超向上 駆引力超向上
勝負力超向上 神回避 隠密行動 身体能力超向上
致死無効 復活 超回復 精神汚染超耐性
環境変動超耐性 身体異常超耐性 武術超覚醒
経験値超入手 情報操作
アンロックスキル:人体操作 不死 物質改変
魔力無限 魔法新規作成 世界秩序超改変』
翔琉の視界にステータスが現れた。
(ワケが分からなくなるから、スキル獲得とスキル、魔法の行使はアナウンスが欲しい)
《魔力を200消費し、魔術:回復魔法を行使しました》
《アンロックスキルから情報操作を獲得しました》
(やっぱりさっきのは回復魔法か)
「てか、マジでクソだな…」
「ん?どうかしたか?」
「いや、なんでも」
ガイルは翔琉のぼやきが気になるが、翔琉に逸らかされた。
「そうか…」
「お、ついたついた」
「ここがマラフェスタ王国王都の冒険者ギルドだ!」
「はぁん」
日本では見た事ない建築様式。異世界味を感じる。翔琉とガイルは扉を開けてギルドに入り、受付で署名と血判を押し冒険者登録を済ませた。どうやらこの世界の文字言語や音声言語は全て日本語、英単語などに翻訳されている。
そして、翔琉はガイルの腕を折ったという事で本来はDクラススタートの所をBランクスタートになった。
「このネックレスがあればギルドを通して買ったりする事が出来る」
マラフェスタ王国の国章が刻印された金色のペンダントに、銀色のチェーンが通っている。付けているだけで高揚感や裕福感が満たされて行く。
「便利だな」
「まぁな」
(文明レベルとしては石油機械のものがちらほら見れるから朝鮮戦争からベトナム戦争終戦あたりだろうか…)
(魔法があると技術発展が遅れているもんだと思っていたが、そうでもないらしいな)
質問したい事は山ほどあるが、翔琉は最も重要なことを尋ねる。
「なぁ、魔王って知ってるか?」
ガイルは険しい顔になる。
「あぁ」
「ここんとこずーっと音沙汰無いが、上の奴らがガタガタ騒いでやがる」
魔王による被害が無い。それ即ち平和。しかし、翔琉は平和を1番嫌っている。
「なるほどな…」
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