異世界は職業スキルで乗り越えます!

27:30

転移♦︎


 多数の問題を抱えた日本は以前の国際的地位を失い、後進国の烙印を押されてしまう。そんな日本では絶えず国民による暴動や演説が発生していた。


「日本を救おう!」

「栄光ある日本を取り戻そう!」

「ここで挫けてはいけないんだ!目覚めよ日本人!」

「日本を敬愛し、大和魂を取り戻すんだ!」


「「「「おお!!!」」」


 民族主義からなる日本主義。


「これは日本の罪を償う機会なのだ!」

「今こそ!歴史を見直し、罪の意識を持とうでは無いか!」

「戦争犯罪を認め、国旗掲揚国家斉唱を直ちに廃し、皇室を無くして戦争犯罪人を奉る靖国を焼き討ちにするのだ!」


「「「おお!!!」」」


 共産主義からなら日本主義。


「日本は日本人のためのものだ!」

「外国勢力を排除し、君主に忠誠を誓い、今こそ日本人としての誇りを取り戻そう!」

「日本は神日本磐余彦尊の時代から現代まで、大御宝として平穏を享受してきた!今こそ!君主へ恩義を返し、栄光ある日本を取り戻そう!」


「「「「「「おおお!!!!!」」」」」」


 排外主義からなる日本主義。


 日本は分裂した。多種多様な思想を持つもの同士が集まり、組織を築き、実行に移す。

 金のある者だけが裕福を謳歌し、金のない者だけが地獄を味わう。違法を違法というものはいなくなり、賭博、麻薬、売春に文句を言う者は変わり者。何が正しくて何が間違いなのかは多種多様。そのような環境で育った青少年達に"普通"の認識は存在せず、多かれ少なかれ"右"か"左"に偏っている。


(どこもかしこも他人と自分を比べて優劣をつける……)

「まぁ…それが人間の良い所か…」


 翔琉が窓の外を眺めて物思いに耽っていると、クラスメイトが話しかけた。


「…もう卒業だな」


「お前か…」


「親友の事をお前かって、それは失礼だろ」

「…今思い返すと、色々したよな」

「去年の夏休みにランティアしたの覚えてるか?」


「あー、あの金が発生しないアルバイトな」


「何言ってんだよ、ボランティアだぞ?」


(お前こそ何を言っている)

(労働に対する報酬がクソだったから、労働者が文句言い出したんだろ?)

「んで? お前は進路どうすんの?」


「うーん実家継ぐよ」


「実家って何やってたっけ」


「塾」


「お前万年ビリじゃん」


「うるせえよ」


 クラスメイトが近づいてくる。


「ねぇ翔琉」


「あ?」


「進路は決めた?」


「あぁ、会社員か公務員だ」


「翔琉にしては平凡じゃない?」

「あれだけ日本の公務職はダメだとか言ってたのに」


「あーまぁ色々だ」


「謎すぎ」


 何気ない会話、何も変わらない日常、無常感とは程遠い。

 気付けば生徒達は皆、宇宙のような空間にいた。この瞬間にクラスから35人全員が消えたのである。これは後に『富裕層子女35名集団失踪事件』と呼ばれ、日本が戦争へと走るきっかけとなる。


「はぁ?!」


「なんだこれ」


「何処なのここ!」


「意味わかんねえよ」


 不思議な空間に囚われた生徒達は助けを請う者や愚痴を飛ばす者など、各自助かる方法を模索する。中には全く動じない者もいたが。


【落ち着きなさい生徒達よ】


 皆の脳内に響く声。その声を聞き、皆の動きが止まった。


【貴方方には私の作った世界に行ってもらいます】

【そこで、魔王を倒していただきたい】


「魔王?」


「なんで俺達がそんなこと」


 理解が追いつかない生徒達。


【貴方方には、魔王を討つ為に通常よりも特殊で強力な職業スキルと関連スキルを与える】

【転移初日に死ぬことはないだろう】


「はぁ?」


「何言ってんだよ…」


「さっきからずっと誰なんだよ!とっとと出てこい!」


【私はこの世界の"神"です】

【それでは健闘を祈ります、転移者達よ】


 淡白な回答の後、生徒1人ずつの足元に魔法陣が出現した。生徒達はまた焦る。ただし、1人は楽しんでいた。この狂状に。


「やった…落魄れた日本からの解放だぁぁ!!!——」

「ゔぅえゎいってぇ」


 翔琉の転移先は荊の茂みであった。


「あんの神とんでもねぇとこに転移させやがって」


 転移初日で傷まみれになる。


「ったく」


 荊から抜け出し汚れを払う。ポケットの中を確認するが、何も入っていなかった。


(スマホ入れてたのに…)

「あ、そうだ」

「スキルとかってどうやって確認するんだ?」


 その発声後、視界に情報が出現する。


「そんなVR的な…」

「えーっと…職業……ギャンブラー?!」


『氏名:いただき 翔琉かける Lv.1


 魔力:122000


 年齢:18歳


 職業:ギャンブラー


 職業スキル:ギャンブルに必ず勝利する


 関連スキル:手品 強制承諾 超記憶 演算超排除

 思考超加速 暗殺 視線誘導 動体視力超向上

 反射神経超向上 基礎値無限大 上限超突破

 読心術超向上 配当計算超向上 駆引力超向上

 勝負力超向上 神回避 隠密行動

 身体能力超向上 致死無効 復活 超回復

 精神汚染超耐性 環境変動超耐性

 身体異常超耐性 武術超覚醒 経験値超入手

 

 アンロックスキル:人体操作 情報操作 不死

 物質改変 魔力無限 魔法新規作成

 世界秩序超改変』


「は?」

「イかれてんじゃねぇのか……」


 ここから翔琉の摩訶不思議な異世界生活がスタートした。


「…こう言う異世界系の定石は人里に行くことか」

「普通に考えて文明と接触なんて難しいよな」

「よし、街を探すか」

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