第2話 能力確認★
「おっと」
光が収まった時、私は斜面に立っていました。
数歩、たたらを踏みます。
幸い、緩やかな傾斜だったため、転生直後に転落死するという間抜けな事態は免れました。
「……山、ですか」
辺りには木々が生えています。
斜面の反対側を見ると、そこも青々とした木々に覆われた山でした。
幼少のみぎりに幾度か訪れた、母の実家を思い出していると──。
──カチリ。
と、何かが噛み合う感覚がありました。
《種族進化》が可能になったことが、直感的に理解できます。
「しかしおかしいですね、《種族進化》が人間に起こることは稀だと聞いていましたが……」
それも、かなり《レベル》を上げた後でなくてはならないそうです。
この状況は非常に不可解です。
とはいえ、《種族進化》にデメリットは無く、ばかりか能力が大幅に向上するとのこと。
《種族》に合わせて新しい《スキル》も得られるらしいです。
どうすれば出来るかは本能的に分かりますし、早速やってみましょう。
「…………」
自身の内側へ意識を向けて、グッと力を込めます。
胸の中心になにか、熱いものが集まって来ます。
やがて熱が最高潮に達したところで
「あっさり終わりましたね」
時間にして数秒。それだけで私の変容は完了しました。
背が伸びたり角が生えたりはしていないようですが、身体能力が上昇したため体が軽いです。
それから、《スキル》も得られました。
進化したことで得た《六神通》を使い、自身の《ステータス》を確認します。
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人間種―仙人 Lv1
個体名 ヤマヒト
スキル 具心具召喚Lv1 仙身丹Lv1 ハートアラートLv1 六神通Lv1
称号
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一つ一つ視て行きましょう。
《具心具召喚》ランク7:魔力を消費し、《装備品》を召喚できる。
転生特典の《スキル》ですね。
現在は《レベル1》のため、召喚できるのは《心象剣》だけらしいです。
魔力消費も軽いようなので一度試してみましょう。
「召喚、心象剣」
ズシリとした重みと共に、一振りの刀が現れました。
銘は『
鍔は無く、柄と刃がそのまま繋がっているため、間違って指を切らないよう注意が必要です。
僅かな反りの入った刀身は、私の胸から爪先辺りまであります。
相応に重量もあるので、《種族進化》していなければ持つこともままならなかったでしょう。
「ふっ」
傍の木に向かって振ってみます。
しかし、刃は樹皮に受け止められてしまいました。
一点の曇りもない銀灰色の刀身を眺めます。
刀の目利きは出来ませんが、この美しい刀がナマクラであるとは考えにくいです。恐らくは私の技量の問題でしょう。
刀どころか竹刀すら持ったことがないのだから当然です。
要練習ですね、と心にメモをして
次の《スキル》を確認しましょう。
《仙身丹》ランク7:常に全《パラメータ》を大きく引き上げる。常に魔力を急速に回復させる。常に再生させる。
これはいわゆる
切ろうと思えばオフにもできますが、そうしなければ常に効果を発揮するようです。
説明文通りの効果なのでこれ以上は特に語ることはありません。
次に行きましょう。
《六神通》ランク8:神通力を扱える。
《天眼通》:自他の《ステータス》の詳細を知れる。
俗に言う鑑定《スキル》です。
《ステータス》とは、身体能力に補正を掛ける《パラメータ》、特殊能力である《スキル》、同じく特殊能力の《称号》等々のこと。
この《天眼通》があればそれを自由に覗けるのです。
敵を知り己を知れば百戦危うからずと言いますし、とても心強いです。
《スキルレベル》が上がれば他の神通力も覚えるようなので、今後にも期待できます。
そして《ハートアラート》は、
「!」
脳裡に響く警鐘。
それに従って駆け出します。
斜面を移動し、窪みに飛び込みました。
そのまま身を伏せ、窪みの縁に潜みます。
──ドシン、ドシン、ドシン……。
息を潜めると、迫る足音が聞こえて来ました。
恐らくは魔物でしょう。トラックのような重量感で、踏み出すたびに地面が震えるようです。
気配を殺し身を潜めていると、この世界に転生してからのことが走馬灯のように流れて行きます。
《スキル》を確認したこと、《スキル》を確認したこと、《スキル》を確認したこと……。
走馬灯が五巡くらいした頃、足音の主は通り過ぎて行きました。
「ふう、何とかなりましたか」
足音が聞こえなくなったところで立ち上がります。
服をはたいて土を落としました。
ちなみに、服装は転生前に来ていたスーツではなく、この世界で一般的な麻布の物に変わっています。
「それにしても、《ハートアラート》があって助かりました」
《ハートアラート》ランク6:自身に迫る危険を察知できる。
この《スキル》のお陰でいち早く魔物の接近に気付けました。
危険のやって来る方角や度合いなどを計れるため、この魔物の
さて、次は《称号》の《
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Lv1 常に観測上の感情ランクを0に固定する。
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説明文だけでは分かりづらいですが、つまりは平常心に見せかけるということのようです。
他者の心を覗く能力に対しては有効だと思いますが、それ以外で活躍する場面が思いつきません。
《称号》は成長すると効果が増えることもあるため、そちらに期待するとしましょう。
さて、これで全ての能力が確認できたはずです。
ですが一応、見落としが無いかチェックしておきましょう。
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スキル 具心具召喚Lv1 気配察知Lv2 仙身丹Lv2 潜伏Lv1 ハートアラートLv1 六神通Lv1
称号
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おや……?
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スキル 気配察知Lv2 潜伏Lv1
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……何か増えていますね。
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