第24話 死を詩へと……


会ったこともないのに、テレビや銀盤にしか会えなかった彼なのに、妙に日常の綾に溶け込んでいた。


死ぬ意味を考えすぎて、死んでしまったんだろうか? 



分からない。


僕には分からない。


報われないのなら死を選ぶのは理解できた。



僕がこうして、春風が靡く、桜月夜の下で日記帳を開いて、縋るように邪念を振り払いながら、言葉の有用性と社会的な固定位置に縋っているからだ。


桜月、僕はこのまま、滑り落ちるように堕落して、何のエゴも昇華できず、裏切られるんだろう。



どうせ、負けるんだろう? 


彼のように脚光を浴びず、踏み絵のように踏まれて、才能の有無よりも罵倒の非才に恵まれていく。


それが僕。


ちっぽけな浅学非才な僕。



彼のように僕はなれやしないだろう。


生き方も命運も、そして、死への覚悟も。



僕は感性の閾値を頑なに心酔できる人が羨ましい。


繊細さをカムフラージュして、繊細さを自認できて、繊細さを大いに謳歌できて、繊細さに矜持を持てて、とにかくそんな繊細さを大盤振る舞いできる人が羨ましい。



繊細さが完璧な人なんてこの世にいるのか、皆目分からない。


分からないのが、僕にセンシティブさが欠如している紛れもない証拠だろうに。


想像力が欠落し、想像力のジレンマに収監され、想像力の豊富さにも忌憚する僕は繊細な人とは無縁なのだ。



何か、生きていくのが疲れた。


疲れた。


ああ、疲れたんだ。



項垂れてばかりだけど、死を詩へと変えるため、僕は今日も生きている。


同じ詩の韻律に僕は恋い焦がれている。


なぜ、人は死を急ぐとき、詩人になれるのか。



バタフライエフェクトのように僕らは死を詩へと変えているのだろう……。



夜桜、僕は死も詩も愛したい、この穢れた素手で。



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