第23話 タナトスの誘惑、世情を疎む夜


あれから、また何人もの芸能人が自ら夜の底で命を絶ち、この荒んだ世界に桜を散らすとはまだ、予想していなかった。


多くの命の火が消えた芸能人も含め、多くの若者が有能な未来を傷つけるように、その銀のロープに首を傾げ、宙をぶらつかせ、天涯孤独な屋上から身を投げ、夜行列車に泣き叫びながら飛び込み、毒薬で死を急ぎ、……ここでも手に負えない自死の方法を試し、成功していた。



僕は死に損なった、無害の負け組だった。


勝っているとか、負けているとか、その連用形で簡単に片づけて空しくないのだろうか? 


現在形にしがみ付いて、何がしたいのか、この世情を酷く疎む夜がある。



日向にいたような美貌に選ばれた彼もまた、底知れぬ心の闇も腐らせるような、ドライフラワーを抱えていた。



その腐敗も耽美的な、澁澤龍彦の翻訳した怪奇小説に登場する、美少年のような妖美なひやひやするほど眩い、紅玉のような輝きを纏っていた。



誉め言葉だ、最上級の。


妖しさを備えた紅顔の美少年なんて末代までいないだろうに……。



彼の自死は大きな痛みと悼みを、そして、心に星空を描くような傷跡を残した。


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