第21話 桜花予行練習


死のうとして、男性看護師や主治医から怒られ、責められて余計に死にたくなった。


保護室で大勢の大人から殴られ、押さえつけながら暴行されても泣き叫ぶしかない。


涙が止まらなくなって、大声を天空に向かって裂けるように叫んでも、憐れむ者なんてここでは、一人もいなかった。



軽蔑と嫌悪の視線を思い切り浴びる。


人間はいとも簡単に他者と弱者の線引きを行い、ヒエラルキーに侵されたマイノリティには、これでもか、と痛めつけられるのが常だった。


桜、散ってしまったかな……と僕が凍えながら保護室でポツリと呟くと、監視した男性看護師がこう、言った。



『こんな駄目な子でも感性があるんだね』



どんなに殴られ、蹴られ、罵られ、誹謗され、中傷されても、この一言に勝る発言はなかった。


刑務所よりも悲惨な保護室で僕は性的な暴行も受けた。


服を脱がされ、殴られ、蹴られ、中傷され、桜の頃の青春哀歌、群青哀歌を台無しにされた。



元々、あいつから犯されるのは慣れていたから、この日のための予行練習のようなものだった。


あいつにされた傷よりもはるかに傷口は容易く広がる。


桜があっという間に散って、路上で朽ち果てた死体に桜の花びらが合わさるように。



保護室でほぼ一日を過ごすとようやく出られた。自殺未遂をして本当に愚かだった。


ある看護師は僕と同年代の難病の少年が斜交いの小児病棟に長期入院しているのを皮切りに見事な叱責で罵った。



『今、生死をさ迷っている子供がたくさんいるのに、君は神から保証された、元気な身体を持ち合わせながら野垂死にするんだな』


 

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