第18話 孤影と溶け合った街並み


闇夜に浮かぶ雨夜の月は僕の暗鬱に溶かした心を照らしてくれる。


病棟から梅雨入りなのに雲間から見えた、大きな白い月が見えた。



個室の部屋には勉強道具と身の回りの日用品、最低限の飲み物と着替えとタオル、それが僕の持ち物だった。


ベッドから足をぶらぶらさせながら小夜中の、孤影と溶け合った街並みを垣間見た。


幼い頃、このひりひりとかじかんだ世界もこの上なく、色彩に満ち溢れ、何もかもが温かった筈だった。



青々と照らされた、水無月の月夜の下、殺風景なベッドで僕は胡蝶の夢を貪りながら横になる。


雨夜の月が仄かに笑う。



こんな世間体と孤絶した僕を悼んでくれているんだろうか。


僕はその純白な孤月を見ながら何もかもを呪詛した。



壊してやる。


壊したくない。


嫌だ、壊したい。


でも、何を? 



疑問符は苦痛へと変更を余儀なくされ、平常心を蝕む刃となって鉛のような心を痛めつけた。


ああ、春の世の月だけは変わらなかった。


何もかもを失っても、この春の世の月だけは忖度しなかった。


 

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