第17話 過去を壊せば、


過去の僕はいつも、あいつから変に慰められて、花影を折られていた。


過去と地続きの僕はまた、希望が崩れる音域を察知したように悉く、不遇に思えた。


ほら、穏やかな日常が禍々しい、グラデーションのように溶けていくだろうよ?



治る見込みのない病魔のように僕を象った日常の陰影は渋々と侵されていくだろうに? 


徐々に微細な硝子細工のスワロフスキーの天使が、手で握り潰すよう砕かれ、ほらほら、無残に壊れていく。


母さん、どうして、罪を犯したの?



問いかける術も、次々と享受する同情票も、うまく取り繕った、判官びいきも僕にはない。


僕は盈月をクッキー缶の中のクッキーを荒らすように食べていく。


毎月の地獄で遮光する、不吉な謂われのある、歪んだ声色の落陽を溶かしていく。


ほら、今日もまた、有為転変のように痺れを切らした悲鳴が聞こえるだろうに。


こんな怒りさえも、理解不能となった、些少な僕を食い荒らす、悲鳴の音色が。



僕はこの白い病棟に入院してから、ひと月は寝て過ごしていたらしい。


あの日からぐったりと起きていられなかった、と看護師さんからそれとなく聞いた。



母さんは今、独房の中だ。今の僕もさほど変わらない。


学校がどうか、将来がどうか、どうでも良かった。


ただ毎日が無為に過ごせればいい。


ただ、それだけ、書きかけの未来レターを破るだけだった。


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