第13話 青水無月、愛が必要


これじゃ、朧雲が瀰漫する桜月夜、花街で彷徨する、幼気な淫売婦と同類だな、とふらふらと哀しみ、ちびちびと憂いながら。


この永遠の春のように濃い、偽りの愛の台詞だって、ちゃんと計画書をうまく組み立てないと、あいつはすぐに憤懣を隠せず、僕を面罵するから、ほら、慎重に腐敗した透明な悩乱で夢破れた愛の文を囁こうね。



「お兄ちゃん、ごめんね」


青水無月、惨めな匿名のレッテルを貼られた、透明な少年には執拗なほどの謝罪が愛だった。


謝る行為で少年はぐらつく、薄汚れた自尊心を保っていたのだ。


他者が見たら、あまりにも哀れだと見下される、不思議と僕は僕自身が可哀想だ、とは微塵も思わなかった。


これくらいの腐朽の囁きなんてよくある話じゃないか、と。


鎌鼬を飼いならした、僕は僕に言い聞かせる。



「辰一君のこの前の都内模試の成績ってすごく良かったんだろう?」


 虎が雨が降り注ぐ、梅雨の星の下で、あいつは僕にそこを舐めるよう、命令しながらこの場において、狙い撃ちしたように不似合いな質問した。



「どの教科の偏差値も70を超えていたんだって? 全く、毎晩、こんなエッチな遊びをしていて、まあ、よくこんな成績を残せるものだ」


むしろ、学校の授業に退屈し過ぎて、まとまった暇さえあれば、授業中でも教師の文言を無視して、発展的な自習を隠れながら実行していたくらいだったから僕にとって勉学とは旧来の友人のような存在だった。

滑稽な道化師の不愉快な戯れのように。


何となく、脂汗のせいで塩辛い。



「辰一君は本当に千夏の子供なのかい?」


あの人は本当に知性がないように見えるからだろう。


緑雨が降る小夏の宵、思う存分、あいつは僕も同じく思うような疑問を投げかけた。


「うん」


 

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