第11話 プルシャンブルー


そのいつもの決め台詞を言い放った、あいつは毒針を隠し持つ、黒い砂漠で棲む、蠍のように(比喩としては蠍に失礼だとは思うけど、これしか浮かばなかった)僕の背中や臍、腰を回し、何度も密着する。



ゆるりとその青黴によって、腐った毒林檎の皮のように赤々とした唇で、あいつは交わしながら、僕の上体を揺り動かし、青い吐息をまだらに零す。


僕はあいつから、性的に虐められているなんて、あのときは微塵も思わなかったし、どの理由として、普通の子供も当たり前の通例としてやっている情事だ、と思い込んでいたからだ。



「いい子だ」


あいつが恋水を垂らすと僕は全身に溽暑を浴び、疲労困憊に陥ったように体躯をのけ反った。


あいつはすっかり、僕の拙い青さに夢中になっている。



プルッシャン・ブルーの渦中、何度も秘められた両足の合間を握りつぶし、その秘宝の擬宝珠を強気に恣、汚らわしく触り、僕はその情動の痛みによる快楽で僕もまた、その邪恋の花手水の水面に溺れていた。


青い快楽を覚える必要性はなかったのにこの忌々しく、意地らしい情欲はごく自然的に僕の哀しみを発散させている。



「おじさん、どうして? あっ」


 精を出しそうになって、切れ切れになった言の葉のレースを吐き出すと、あいつは有頂天になって責め立てた。


「君が可愛いからだよ。辰一君が大好きだから」



 あいつは烏の濡れ羽色のように漆黒の学ランを中途半端に着せたまま、僕と戯れる性癖があった。


そのほうが増大なエロスを覚えるから、とあいつはこの前、訳知り顔で僕に伝えた。


そのついでにあいつが撮影したワインレッドのような風合いの動画を見せてもらったこともある。


あの漆黒の時空が歪み切った、動画の中の青い過去を弔う、僕は見るも無残に厭らしく嬌声を上げ、何度も誘惑しながら、にやけては挑発し、定形的な売笑婦のように演じ切っていた。



「辰一君の動画って仲間内から人気なんだよ」


 あいつは僕の動画を何某の奇人倶楽部に売りさばいているらしく、何かとあれば、意気揚々と自慢している。



「どれくらい、売れている?」


 僕がその青臭い絶頂で問うと、あいつは淫らに腰を振りながら嘲る。



「いちばん人気だよ。辰一君の裸体コレクションが飛ぶ鳥を落とす勢いで売れている」


 あいつのマゼンタ色の恋情とも言い得て妙な、誉め言葉に僕は空虚な迷路の中で首をかしげている。


「そうなんだ。人気なの」


 

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