第2話 空白少年
部屋の電気を点け、冴えた頭で床頭台を前にパイプ椅子に腰掛け、平積みになった本を読み耽る。
この青い閉鎖病棟に閉じ込められるくらいのだから、本来ならば、意識が混濁して、頭脳明晰じゃない筈なのに、不思議と金字塔を打ち立てた、名作ばかり読んでいる。
飛ばし読みでもいいから、読むようにしている。
数多くの詩集を読んで、咀嚼するようにその青く、薄情な諦念と一体化する。
どうして、ここに僕が佇んでいるのか、その残忍な宿命の蓋然性を知りたかった。
天地長久の時空を司る神様に尋ねれば、導いてくれるか、分からないけど、この病棟は日本神話の中で有数の聖地の真上に建っているのに。
朝ごはんになるまで微妙な空白に地団駄を踏む。
嫉妬の逆鱗に触れた僕はいつも、長く、弱く、きつく、この巨壁に通行停止させられている。
誰がここで立ち止まっているのか。
その質問は?
ふん、また、ミステイクしたよ、グッドバイ。
にっちもさっちも行かない、虚ろな一日を僕は思う存分、過ごすのだ。
本当ならば、高校一年生になっていたのに、僕はこんな偏狭な病室に閉じ込められ、悪運に掌握されている。
馬鹿にしたい奴らは僕を虚仮にして、悪罵すればいい。
僕は残酷な矢をつがえ、小糠星を射るべき、弓矢の少年なのだから。
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