第7話

千影ちかげは、サラサラした黒髪をバツが悪そうにカキ乱しながら、陽向ひなたの涼やかな視線から逃れるように、フィギュア人形を眺めた。


このところハマっているオンラインゲームで、千影ちかげがアバターとして愛用している、女戦士のキャラクター。

伽羅色きゃらいろのツヤヤカな素肌に、紫がかった黒髪。

黒曜石こくようせきの瞳に、紫水晶アメジストの虹彩が挑発的に輝く。

クールビューティーな無表情にもよらず、意外と無邪気で天然……という、いわゆるギャップ萌えを狙った役どころだ。


しなやかな細い腰に、ボリュームよりもフォルム重視で高密度に引きしまったバストとヒップ。

一見すると防御性能には全く期待が持てない、水着まがいの戦闘服を身につけている。


「あっ!」

千影ちかげは、ハッと気付いて声をあげた。


そういえば、夕べ寝る前にオンラインゲームに興じていたとき、女性キャラクター用の新しいコスチュームが期間限定で登場したのを知って、

「いいなぁー、このスキン。課金しちゃおっかなぁー……」

と、ヘッドホンのマイクごしにボソッとつぶやいたことがあったっけ。


そのコスチュームというのが、キャラクターのボディーラインにピッタリと寄り添う、ボンデージまがいのセクシーなライダースーツだったのだ。


「プフ……ッ!」

千影ちかげは、こらえきれずに吹きだすと、フィギュアを片手に持ったまま、ハラを抱えて布団の上を笑い転げた。


まさか、オンラインゲームのキャラクターと、夢が"同期"するなんて。

思ってもみなかった。

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