第5話

*****


8畳間の和室に敷いた布団の中で、千影ちかげは、ものうげに寝返りを打った。

お気に入りのパジャマのモコモコの肌ざわりに甘えるようにモゾモゾと身じろぎしながら、やっと上体を起こす。

障子しょうじごしに差し込んでくる、爽やかな初秋の朝の光がまぶしくて。半目を開けてマブタをこする。


綺麗な淡桜色のクチビルを思いっきり開けてハデなアクビをもらしながら、ふと寝具を見わたして、首をひねった。


「あれ? 陽向ひなたのヤツ、もういない……」

目を覚ます直前まで、"夢の中"で一緒だったのに。


千影ちかげが他人の夢と同期するには、夢を見ている当事者の隣で一緒に寝ることが絶対条件なのだ。


なのに、

―――夜どおし夢の中で一緒に踊った"本体"は、どこへ消えてしまったんだ?

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