第4話
ポカンと目を大きくした
―――"この夢"を一緒に見るのは、初めてじゃないのに……
でも、そんなことよりも、いつもの浮き世ばなれした天然っぷりが、さらに輪をかけて調子っぱずれで幼く見えるのが、
実際、こんなときでもなければ、この不肖の兄がデキのいい弟をからかって
一卵性の双子だけあって、顔と体の素材はウリふたつなのに。
かたや
長いマツ毛を密にまとったアーモンド形の優美な目に浮かぶ、赤みがかったトビ色の瞳がイタズラっぽくキラめいて、
「なあ、
「お、踊る……って?」
「ほら、この曲に合わせて。ワルツをさ」
「でも、ボク。ワルツなんて踊れないよ」
いつも超然として涼しげにくつろいでいる美貌には、不自然にさえ思える表情である。
「オレがエスコートしてやるよ。……さあ、ステージのド真ん中へ行こう」
と、双子の弟の手を優しくつかみ寄せた。
まあ、現実には、社交ダンスなんて一度も踊ったことはないんだが。
夢の中でなら、記憶の中に散在する断片的な「ワルツ」のイメージだけをつなぎあわせて、完璧なオーケストラとダンスを再現することも、お手の物なのだ。
「なんてったって、
ほのかにサビを含んだ甘ったるい声で、
「うん。そうだよね……」
と、
真っ白くツヤめく靴音を軽やかに響かせながら、美しい双子は、幻想の舞踏会に笑いさざめく華やかなウサギたちの間をすり抜けて走った。
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