離れたくない。

 俺の最愛の離れがたい人は寒がりらしい。


「そんなに俺にひっついて、よほど寒がりなんだな」

「はぁーあったかいよー。離れたくないよ」


 一言、言わせてもらおうか。

 ……可愛い。

 寒いならば、そこら辺の毛布でも掴めばいいものをわざわざこの俺に抱きついて暖を取ろうとしているのだから。


 生憎、俺は抱きつくことが苦手であるから、極力彼女に近づくことに留めておこうと思う。

「なんでそんなにあったかいんだよー。本当にもー。好き」

「はは、俺も生きてるからな。そして俺もお前のことが好きだよ」

 ソファに座り雪が降るのを眺めながら過ごす冬というのもなかなかないものだ。彼女が時々「はい、あーん」と言いながらおやつをくれるから、それもまたいい。


 こうやって家で二人で冬を過ごして何年になるだろうか。

 俺に飽きることなく、ずっと一緒に暮らしてくれていることがたまらなく嬉しい。


 初めて会った時は、確か雨で寒い日だったはずだ。

 雨にあたって、濡れて、寒くて、苦しかった俺に傘を傾けて、タオルをかけてくれて、それから、話しかけてくれた彼女には感謝してもしきれない。


「わ、ちょ、ちょっと!?」

「……今までありがとう。そして、これからもよろしく」


 感謝の気持ちを込めて肌を撫でると、少しだけ、彼女の体温が上がったような気がする。照れている顔もまた可愛い。

「へへ、少しくすぐったいなあ。でも、キミも私のこと、好きなのかー?」

「そうに決まってるだろう?」

「ああ、本当に私、幸せだ。こんなに心も体もあったかいんだもの!」

「お前はそうやって……」

 いつまで、こんな生活を続けられるだろうか。願わくば、彼女とずっと生活していたいところだが、そうはいかないのかもしれない。

 俺は彼女のことが好きで、きっと彼女も俺のことが好きだ。こう二人で身を寄せ合って温もりを感じられる。


 それでも、俺と彼女は決定的に違うことがあるんだ。……神様のイタズラとでも言おうか。


「んもー本当に可愛いなぁ、タマ」

「にゃ~」

「暖かいよ~、逃げないでね、タマ」

「にゃ~」


 そう、俺は猫で彼女は人間。俺が彼女を愛していることは伝わらない。非常にもどかしい。


「大好きだよ~タマ~」

「にゃー!」


 彼女に不満はない。

 あえて一つだけ言うなら、俺が女ではなく男だと認識してほしいものである。


***

2019/1/1

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