第6話

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翌日もカラリと晴れたいい日だった。


昼過ぎに、くだんの荒れ寺の庭に、白木しらきを組み立ててあつらえた簡易な祭壇と、その上に同じく白木のひつぎが置かれた。

榛名はるな 月御門つきみかど神社』の祭守たる陽向ひなたの指示により、白い正絹を敷きつめられたひつぎの中には、落雷によって倒壊した桜の老木の、焼け残った根元が寝かせられた。

御神木ごしんぼくの根元を人形のごとく見立てて、真新しい白無垢しろむくを着付けたばかりか、胸元には魔除けの懐剣を模した短い木剣ぼっけんさえ絹の袋に麗々しく入れてあてがわせたものである。


昨日とはうって変わって、パリッとした狩衣かりぎぬ差袴さしこを引きしまった身にまとい、頭には烏帽子えぼし、手にはしゃく、足には浅沓あさぐつで神職の正装を凛々りりしく整えた陽向ひなたは、いっせいに居並んだ村人たちの畏怖と疑念の入り混じった視線を背中に浴びながら、ひつぎの前に立った。


そして、「禊祓詞みそぎはらえのことば」を朝早くに筆でしたためておいた奉書紙ほうしょしを懐から取り出し、涼やかにみあげる。


高天原たかあまのはら神留坐かむづまります、

 神漏岐かむろぎ神漏美かむろみ命以みこともち

 皇親神伊邪那岐すめみおやかむいざなぎ岐命みこと

 筑紫つくし日向ひむかたちばな小門をど阿波岐原あはぎはらに、

 禊祓みそぎはらたまとき生坐あれませる

 祓戸はらいど大神等おおかみたち

 諸々もろもろ禍事罪穢まがことつみけがれ

 はらたまきよたまえとまをことよし

 あまかみくにかみ八百万神等共やおよろづのかみたちととも

 あめ斑駒ふちこま耳振立みみふりたてて間食きこしめせと

 かしこかしこまをす……」


芥子色からしいろはかま姿でそばに控えていた星尾ほしおは、み終えた奉書紙ほうしょしを受け取りひつぎの中に納める。


祭壇の手前に設置した献花台には、村人たちに摘み取っておいてもらった色とりどりの庭の花や野山の花が、あふれんばかりに積んであった。

星尾ほしおは、皆に向かって、それらの花を持ち寄り、ひつぎの中にある桜の木の人形ヒトガタを飾ってやるように呼びかけた。

村人たちは、にわかにザワザワと活気づき、われ先にと献花台に集まった。


その間に、祭守の陽向ひなたは、経机きょうづくえに置いていた大きな笹の葉を左手に取り、

「オン・センダラ・ハラバヤ・ソワカ」

語りかけるように口ずさむと、儀式の護符とすべく「フッ」と短く息を吹きかけ、ひつぎの中の桜木の枕元に置いた。

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