第4話
*****
村に
世俗の娘を「神のもとに捧げる」とは、すなわち、世俗での「命を断ち切る」ことに他ならず。
「早い話が、純朴な幼い少女が、村人たちによってたかって殺害されたってことだろ。バカげた迷信のせいで」
この限界集落の診療所につとめるたった1人の医師である中年男性は、いかにも数々の無医村で
2か月あまり前、村のはずれにある"花しず
それ以来、村にタチの悪いハヤリ風邪が流行しはじめ、高齢者の命をタテツヅケに何人も奪った。
「なーに、とっくに棺桶に片足を突っ込んだような年寄りばかりだったさ。全員、基礎疾患もあった」
厚手の
診療所に併設している医師の居宅の居間で。
10畳の和室に木製の座卓が置かれ、今朝採れたばかりの山菜や、近くの漁場で仕入れた魚介なんかが豪快に放り込まれた鍋が、卓上コンロの上でグツグツと煮えている。
自前の浴衣を着て、端然と正座をしている
「ボクは未成年ですから」
と、目の前のコップに手のひらでフタをすると、隣でアグラをかくジャージ姿の側近に向かって言った。
「
2年ほど前まで東京のホストクラブで働いて荒い日常をいとなんでいた経歴を、暗に
だが、8つも年下の17才の少年にそんな
「じゃあ、遠慮なく。いただきます」
まあ、もともと、キライではないもので。
「
コップに透明な酒をアフレそうなほどに注いで、医師は、ナゲヤリに言い捨てた。
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