第45話 国王一家はこれから

エルフフィンは観光バス型の宇宙船で月まで帰って行き、ひと騒動収まった太田家の前では、国王と女王陛下へのご挨拶合戦が一通り終わりを迎えた。

父も母も姉貴も、他国ましてや別の惑星の国王と顔見知りだなんて全く知らなかった。

というか覚えていないのは俺だけか。

ララは家に来たことも覚えていたし、さらに俺と遊んでいたことも知っていたわけだしな。

記憶が情けない俺でごめん。

「さてとそろそろ帰るか」

「そうですね。あなたにはもう少し聞きたいこともあるので、お暇しましょうか」

「うん、それがいいと思うよ。早く帰らないと国政も遅れちゃうしね」

そういうとララは俺の隣に移り

「じゃあね。私はもう少し地球に残りますので」

そう言うと手を振っていた。

「勝っては許さんぞ。ララも国に帰るのだ。どれだけ皆に迷惑をかけるつもりだ!」

「お母様お願いです。わがままな娘のお願いを聞いてくださいまし。ララはエレナやセレスシスと同じように地球で勉強がしたいのです」

「あらまぁ、どうしてかしら」

女王陛下は小さな子をあやすかのように優しい声色で答えた。

「それは……地球という未発展の国で、勉強をしてお兄様のように国を支える人間に成長するためです。それに──」

「何を言うか、勉強をいるなら別の惑星でもじゅ──」

「あなたはお黙り!」

先ほどまでやさしさの塊のような女王陛下が、突然怒鳴りだし国王にらみを利かせた。

「それにどうしたのかしら」

「はい。それに昴や美晴や彩星さんみたいな、沢山の大切なお友達もできました。地球の学校でもう一度学び直したいのです」

「うーーーん、どうしようかしら……ララちゃん」

「なんでしょうか」

女王陛下はララにだけ聞こえるようにそっと耳打ちをした。

「────」

「☆▲□●▽────!」

ララは顔を真っ赤にして、言葉にならないような奇声を上げて絶叫した。

「あらまぁ、ララちゃんたら素直な子だね。あなた」

「……それはもちろんだとも私達の子だからな」

「ならば決まりね。あなた私達は先に帰りましょう」

女王は国王陛下とは真逆にララを置いて帰るつもりだ。

国王は女王陛下の怒りに満ちた笑顔を前に、屈服するしかない様子だ。

「ララ。そのあれだ、私達は先に帰ることにする。特に今は《孫とかは》絶対にいらないからな。それと昴! 娘を頼んだぞ。絶対に何かしたら、最高の刑罰で処するから覚悟しておくように」

「仰せのままに!」

俺は身震いした。最高の刑罰ってなんだよ。

「お父様、お母様大好き!」

ララは二人に飛びついてとびっきりの笑顔を見せた。

その笑顔は真夏に咲くひまわりのように大きく優美な姿だった。

俺はその笑顔を見て、なんてかわいい子なんだろうと、今までに感じたことのない胸の高まりを感じた。

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