第39話 現実世界での夜明け

──ブォン

サングラスを外し、後ろの二人を見た。

完全に気絶している様子だ。いや気絶していて正解だろう。

逆さでトンネルを通過したなんて思い出したくもない事実だ。

「ふー、もうすぐ夜明けだな」

「近くに自販機があるのでコーヒーでも買ってきましょうか」

「気が利くね。私はブラックで、ちびっ子はカフェオレで、ララはミルク入り無糖カナ」

俺は車を降りると公園近くのハッピードリンクへ駆け出した。

さっきの激走で足がふらふらする。

コーヒーを四人分買い込み、車に戻るとみんな車から降りていた。

「みんな夜明けのコーヒーだよ」

「ありがとう」

──カチャ。ごくごく。ふはぁ。

朝もやの中、東の空がオレンジ色に輝きだした。キラキラ光る太陽は美しい。

素晴らしい景色を見て、無事に西棟から出られたことを実感する。

これは俺だけの力ではない。エレナちゃんをはじめとして、武蔵さんやセレスシスさんのおかげだ。

「なぁ昴よ。脱出したのはいけど、これからどうする?」

「ここにいては宇宙製造技術を持っている、昴やララは探知機ですぐに居場所がばれてしまう」

「いったん車の中に置いて行けば」

「だがその前に、まずは昴の変身を解くのが先だな」

「ちょっと待ってて」

昴は山型になっている湯具の中に入って変身を解きに行った。

「変身するのに魔法少女じゃないから、恥ずかしい姿になるわけじゃナイのにな……」

遊具の中では俺は念じている。

『太田昴にもどうぞ! 必ず太田昴に戻るんだ!』

そう願うと胸元のペンダントが光だし、昴を包み込む。

光が収束すると太田昴の姿に戻っていた。

うん、今回も無事に変身成功だ。山型の遊具の中から本来の姿で出てきた。

「セレスシスさんありがとう。これがなかったら、二人を助けに行けなかった」

そういうと、変身球メタモパンタシアンの持ち主であるセレスシスさんへ渡した。

ララも自身の持っている宇宙技術で作られたものを渡している。

セレスシスさんは受け取ると、トランクを開け、ジュラルミンケースの様な重厚な作りのケースを取り出した。

「これはただのケースに見えるけど、探知機防止ができる様になっているんだ」

「そうなるとここに収納しておけば、変身球メタモパンタシアンとか黒服が発見出来なくなるのね」

「その通り」

「さてと、これからどうするの?」

「どこの出口から出たのはかは入管くろふくどもは把握しているだろうから、車はここに駐車しておくしかないだろな」

「なら、みんなで歩きますカナ」

「えーどこまで歩くのよ。エレナは遠くまでは嫌よ」

「昴の家でどうかな。まさか同じ家に戻っているとは思うまい」

「あんたのことだから何か企んでいるわね」

「そんなことないさ。相手の裏をかくためさ」

「あー、わかりましたよ前回の日本酒がまだ残っているからそれを飲みに行くきですね」

「ララ、鋭いな……恐れ入った。けど、黒服たちの裏をかくのは本当だからさ。行こうよ、昴の家に」

「裏をかくのは確かにそう思います。でも、昴の迷惑になりませんか」

「俺の方は構わないよ。両親はどうせ出張でいいないだろうし」

「では意見がまとまたところで、昴の家に出発!」

この公園から俺の家までは、徒歩で約三0分といったところだろう。

いいところは、ほとんどが下り坂なのでキツくない点だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る