第38話 西棟からの脱出
電車の移動と同じくものの数分で池袋に到着してしまった。
サングラスを頭に挙げるとセレスシスさんは質問をしてきた。
「大酒呑。池袋に着いたけど、脱出口はどこにあるのよ」
「さて問題です。どこにあるでしょうか」
「下手なクイズね。池袋駅の中にある
「ちびっ子、この車でどうやってそこまで行けというのだね……ごふごふ、椅子を蹴るな!」
「池袋だからランドマークになっているサンシャインとかかな」
「ララは鋭いな、正解。避難訓練に参加したことアルんじゃ無いのかい」
「ねえ、せっかくだから、すぐそこのフタバ行かない。喉乾いちゃった」
「ちびっ子、呑気だな。昴の持っているパスが使えるうちに脱出する必要があると言っておろうが、出たら昴の家で水出し緑茶を頂こう」
「何その水出し緑茶っって、気になるからエレナちゃんはフタバを諦める」
俺たちはセレスシスさんの知る緊急脱出ルートへと向かうことにした。
普通にサンシャイン六〇の駐車場にはいっていく。駐車場内をぐるぐると回り首都高入口のゲートと向かった。
「セレスシスさん、高速に乗るんじゃないんですよね」
「そのまさかさ。高速でポルシェの高性能を思う存分楽しんでもらウンだ」
サングラスをかけそういった。
「だからシートベルトが、普通の二点固定式じゃなくて四点固定式なんですね」
「半分冗談だからね。料金所の領収書ボタンをを三回押してゲートを開くのさ」
セレスシスさんにパスを渡すと料金所に機械にタッチしてから、領収書ボタンをを三回押した。
ゲートは何も驚くこともなく普通に開いた。本当にこれで西棟の外の世界に行けるのか?
疑問は残るものの車はゲートへと進んでいく。
その瞬間全体が光に包まれた光のトンネルを進んでいく。
とても眩しくて目を開けていられない。
だがサングラスをしているセレスシスさんは余裕で運転している。
この光のトンネルを見越してサングラスをしていたのか。
「みんな、無理して目を開けていない方がいいぞ。出たら夜だから目がなれるのに時間が掛かる」
「それを早く言いなさいよ、大酒呑」
僕らは眼を瞑った。
車はぐんぐんスピードを上げて出口を目指している。
眼を瞑っていいても、光が漏れてくる程、まぶしい。一体どんだけ明るいんだこのトンネルは。
しばらく走行すると突然車が止まった。
「どうかしたんですか」
「それがだな、近い出口は
「近い出口ってどこよ」
「裏門」
「──ごふごふ。椅子を蹴るなって」
「そんな西棟の近場に出る馬鹿がいるか!」
「でもさ、その先になると結構遠いいんだよね」
「知らん。安全な出口から出ろ!」
──ごふごふ
眼を瞑っているからわからないけど、エレナちゃんがセレスシスさんの椅子を蹴っているようだ。
そして困ったことにこの車以外のエンジン音が微かに聞こえてきた。
「セレスシスさん!」
「わかているよ。黒塗りの国産高級車だ。追っ手がついに来たみたい」
やはりそうだったか。逃げたことがバレたのか。パスを拝借して使ったことが不味かったのかわからないけど、ここはセレスシスさんの運転技術を信じて逃げるしかなさそうだ。
「逃げれそうですか?」
「ふっふふふふ。安心しタマエ、そのためのポルシェ九一一だよ。みんな腹に力を入れておけよ!」
「ふぇっっっf」
──ブォンブォン
そういうとエンジンを噴かし、急加速していく。キュルキュルとタイヤが鳴く。
このポルシェ九一一カブレオは、時速0キロメーメートルから約四.四秒で時速一00キロメートルに達するそうだ。
スピードが上がるたびにカーブでかかる重力をもろに感じる。
走り屋なら大興奮間違いなしだろう。だが、セレスシスさん以外このスピード感と重力に耐えられるわけもなく、後列席は「きゃーきゃー」言っていたが、次第に静かになっていく、気絶したのかな。
「昴、予備のサングラスを渡しておくよ」
おなかの上に軽いものが落ちてきた。ことれがサングラスだろう。
早速かけると光に包まれた楕円形のトンネルを走っていた。
速度が速くて前方を走っいてる車に追いついてしまう。
「セレスシスさん、前っ前、車ですよ」
「小型のハッチバックだな、ちんたら走りやがって」
「追い越せますか?」
「まかしておけ! 昴、腹に力を入れて床を踏ん張ってろよ」
「はい?」
「ニトロオン!」
謎のスイッチを入れると車は急加速して前方の車にぐいぐい迫って、接触寸前に左へハンドルを切った。
すると、車はトンネル左側面を走っている。さらに車は加速していく。
またハンドルを切りトンネルの真上を走行している。
「イイ感じじゃん。昴どうよこの走り」
「うっわわわわわわわわわわ」
セレスシスさんの髪の毛が逆立ちした状態になっているが気にしない。だってトンネルの真上を逆さで走行中だからだ。
「セレスシスさんいつまでこの走行をするんですか!?」
「そうだな、下を見る限り、トラックとかが走っているから、しばらくはこのままだな」
逆さのニコニコ顔で答えた。
頭に血が上る。上る。
だんだんと地面を踏ん張る力がなくなってきたぞ。
「低速車両の列を越したからそろそろ戻るぞ」
車は徐々に減速をして右側面へ移動し、元の地面に戻った。
し……しんどい。
「昴どうした、顔が赤いぞ……私に惚れタナ」
「断じて違います。逆さ状態で頭に血が上っていたせいです!」
「それは残念。そろそろこのあたりの出口から出ますかな」
左のウインカーを出して出口らしき別トンネルに入っていく。
光に包まれていたトンネルが徐々に消えていき、薄暗い駐車場に出た。
ここは見覚えのある駐車場だ。ララと最初に出会った公園の駐車場である。
がら空きの駐車場の適当な位置に車を止めた。
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